執着しない。手放すことで次に進める
『Fountain Mountain』は3年続けた。東京の人間が地方都市にやってきて作った場は、狙い通りに街に、若い人たちに刺激を与えることができた。
若いお客さんの中には、それぞれの夢に向かって独立して活動するようになった人が何人もいるそうだ。それでも手放したのは、やはり、外から関わることに限界があったからだ。
「地元に飲み込まれてダメになってしまわないように、客観的に関わることを狙っていたんです。だから東京でデザインの仕事をしながら、通いで有田のプロジェクトをやっていた。でもやっぱりそこにいないと分からないこともあったんですよね。それで、リモートで運営していくのは限界だなと感じて、地元の有望な若者に『Fountain Moutain』は譲渡しました」。
投資して自分が作った場を譲ることに、惜しい気持ちは全くなかったと言う。潔いと言うか、もったいないと思ってしまうが……?
「デザインすることを捨てたときに分かったんですけど、もったいないと思って執着すると、次に進めないんですよね。手放すことで余力ができる。それに、体験したことやそこから得た考え方は、自分の中に蓄積しているから、手放したと言っても何も残らないわけじゃない」
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