リペアして長く使い続ける、そうすれば愛着もひとしお
「ウェア選びにはそこまでこだわりがなくって、ビーチ沿いでは暑ければ上半身裸で走ることもあるし、夏場はこういったタンクトップが多いです。今日着ているのはコットン製で、とくに機能性はないのですが、ガチガチではなくゆるいスタイルが気に入っています。ビーチサイドでダボッと、というか、だらしなさこそがポイントかもしれません」。
「ほかではパタゴニアのウェアが多いです。アウトドアメーカーだけあって頑丈で、もし破れたりほつれたりしてもリペアしながら長く使い続けられるのが良いですね。新品のピカピカのものより、使い込んで思い入れがあるものが好ましいです。あのとき転んじゃったなとか、木の枝に引っ掛けてできた穴だなとか、そういう思い出込みで愛用し続けられますから。パタゴニアはデザイン面もアメリカっぽくて、いい意味でスタイリッシュに洗練された感じがないユルさが気に入っています」。
パタゴニアはシーズンごとに新作を刷新するというより、定番品を作り続けて完成度を高めるモノ作りをしているから、トレンドの影響を受けにくいという点もあるだろう。
「ギアに関してはグレーや黒ばかりで、自分にとって心地いいものを選んでいったら自然とこの色ばかりが集まりました」。
愛用のサングラスはオークリーの定番、フロッグスキン。これももう何年選手か思い出せないほど長く使い続けている。
もっとも、サングラスを掛けないで走ることも少なくない。やはり身軽な状態で走ったほうが井口さんにとって気持ちいいし、楽しいからだ。
「なるべくモノを少なくしたいというのは、若いころバックパッカーをしていた経験が影響しているのかも。旅行中は大自然の中でのレイブパーティーなども体験しました。トレイルランニングで斜面をふわーっと気持ちよく駆け下っていると、山の中で身をゆだねて踊っていたことを思い出すときもあります。旅とランニング、そしてサーフィンには、自然の中に身ひとつで溶け込んでいく感覚に共通点を感じています」。
拠点としている湘南では、そんな気分に浸れるランニングコースや、気軽にトレイルランニングできるハイキングコースに事欠かない。おまけにサーフィンもできる。
その証拠に、国道134号線沿いを車で流すと、サーフボードをかついで歩くサーファーやロードサイド駆けるランナーが数多く目につく。ここではアクテイビティが日常生活の風景にすんなりと溶け込んでいる。もちろん井口さんもそのひとり。う~ん、うらやましい!
Running Up-Date」一覧へ「Running Up-Date」ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。
上に戻る 礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真