より洗練された直線
見た目も「240」よりもさらに直線が洗練されたと思う。直線が洗練、って少し変だけど、少なくとも「240セダン」のように“フライングブリック(空飛ぶレンガ)”と呼ばれるほど野暮ったくはない。
スッキリしていて、シンプルなんだけれど力強い。その直線基調のデザインは、イタリアの有名なカロッツェリア(メーカーからの依頼を受けてクルマのデザインや製造を行う会社)であるベルトーネの手にかかると、さらに美しさが加わった。
それが「700」シリーズのクーペ、「780」だ。クーペといえば「流麗な」という形容詞に現れるように、曲線を描くモデルが多い中、このクーペは「力強く」て「シャープ」だ。個人的には今でも欲しい一台。
「700」シリーズはその後、「240」シリーズとの間を埋めるべく、「760」より廉価な「740セダン」「740エステート」も投入され、1990年に「900」シリーズへと受け継がれていく。この系譜は今もS90/V90/XC90へと続いている。
燃費向上のために、空力特性を高めるべくなだらかなラインの車が多い中、700シリーズの洗練されたスクエア感は今、ますます新鮮に感じられる。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。
上に戻る 籠島康弘=文
※中古車平均価格は編集部調べ。