「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……vol.10:「700シリーズ(760/740)」
ボルボ、1982年〜1993年
大海原を走る巡洋艦って、きっとこんな風にドッシリとした安定感で走るんだろうな。かつて高速道路でボルボ「740エステート」のステアリングを握ったときにそう思った。
波に揺れる小舟じゃなく、波なんてあった?みたいに。何者にも揺るがず、車両の重さによる安定感がドライバーにも伝わり、しっとりとした乗り心地。
そんな「700」シリーズが登場する8年前。1974年にデビューした「240」シリーズは、その凜々しい角張ったスタイルと積載性能の高さから、写真家やスタイリストなどから人気を集めたことで日本でも大ヒット。1993年まで約20年間も販売されるロングセラーとなった。
一般的には「カクカクとしたスタイル」と「優秀なラゲージ」「高い安全性」が「240」シリーズの売れた理由に挙げられるが、もうひとつ、価格がお手頃だったこともあると思う。
1980年代の「240」エステートの新車車両本体価格は約400万円。一方、メルセデス・ベンツのミディアムクラスワゴン(「W124」のワゴンだから「S124」)は最も安いグレードで約600万円、高いグレードは1000万円近かった。
そんなメルセデス・ベンツやBMWたちと肩を並べるべく、「240」シリーズの上級機種を開発、1982年に「760」セダンとしてデビューさせた。
上級といっても「240」セダンと大きさはほぼ同じだが、「240」セダンが2Lや2.3Lの直列4気筒だったのに対し、「760」セダンは2.8LのV6エンジンを搭載した。
さらに、この頃からレースカー以外にも広く普及し始めたインタークーラー(ターボエンジンの効率を高める役割)付きの直列4気筒ターボエンジンと、同じくインタークーラーを装着した直列6気筒ディーゼルターボエンジンが用意された。
こうした動力性能を支えるためにも「240」とは異なる、新しいサスペンションも与えられている。
結果として、先述したような、大海原をゆったりと走る巡洋艦のような頼もしい走りを与えてくれたのだと思う。
2/2