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柴田 ところで、昨今のヴィンテージ人気の理由はどこにあると思いますか?
大坪 きっと人の欲って便利で使い勝手がいいというだけでは満たされないのでしょうね。ほかとは違うデザインや背景の物語など、周囲に語りたくなるような+αの要素に惹かれるのだと思います。
柴田 便利さを求めるならスマートウォッチにかないませんからね。一方でヴィンテージスタイルを現代に甦らせた復刻デザインが時計業界で定着しています。これなんかはまさにいいとこ取り。
GLASHÜTTE ORIGINAL グラスヒュッテ・オリジナル/SeaQ パノラマデイト
K18レッドゴールドケース、43.2mm径、自動巻き。284万円/グラスヒュッテ・オリジナル(グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座 03-6254-7266)
旧いダイバーに風格漂うゴールドを追加
GLASHÜTTE ORIGINAL
グラスヒュッテ・オリジナル/SeaQ パノラマデイト
昨年、1969年のダイバーズウォッチを復刻させたグラスヒュッテ・オリジナル。こちらはその金ケース仕様で、アイコンのパノラマデイトが個性を演出する。セラミックスベゼルに300m防水性能、100時間のパワーリザーブなど、レトロ顔に比してその性能は最新鋭だ。
大坪 歴史ある名門ブランドなら過去のアーカイブから紐解くことは簡単です。エポックメイキングな発明や、ブランドらしさを改めて知らしめることにもつながりますからね。
柴田 でも大坪さんにとっては意に反するのでは?
大坪 そんなことはないですよ。ヴィンテージやアンティーク時計はメンテナンスも大変だし、普段使いでも気を使います。実用で使うなら復刻のほうが断然いいでしょう。復刻については否定的ではなく、むしろ肯定派です。
柴田 オリジナルの価値を知るからこそ実用性を備えた復刻も認めるということでしょうね。僕もセイコーの初代ダイバーズをオリジナルと復刻の2本持っていますが、どちらがいいという比較はできませんね。
SEIKO PROSPEX セイコー プロスペックス/1965 メカニカル ダイバーズ 復刻デザイン
世界限定1100本。エバーブリリアントスチールケース、39.9mm径、自動巻き。65万円/セイコー プロスペックス(セイコーウオッチ 0120-061-012)
国産ダイバーズの原点に技術の歩みを凝縮
SEIKO PROSPEX
セイコー プロスペックス/1965 メカニカル ダイバーズ 復刻デザイン
国産初のダイバーズウォッチであるセイコーダイバーズが55周年を記念し、原点である初代モデルを復刻した。デザインやサイズはオリジナルを模範にし、当時のファブリック調ストラップまでもシリコンで再現する。そのうえ、ケース素材は最高レベルの耐食性を備え、安定した精度を実現する毎時3万6000振動のハイビートムーブメントを搭載する。そこにはこれまで歩んできた技術の軌跡が刻まれている。
大坪 僕自身、古いからいいという感覚はいっさいなくって。でも復刻するにもきちんとオリジナルの本質がわかっていて、さらに美的感覚が通じ合うような再現をしているかは気になります。
柴田 温故知新というか。原理主義とはいわなくても中途半端に復刻されるとガクッとくる。でも時空を超えて最新技術を調和させることはイノベーションでもあり、大坪さんが復刻時計を認める理由を納得しました。
RADO ラドー/キャプテン クック オートマティック
SSケース、42mm径、自動巻き。22万円/ラドー(スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7330)
人気のダイバーズが大径化でより現代的に
RADO
ラドー/キャプテン クック オートマティック
1962年から約6年にわたって生産されたダイバーズの復刻モデルに、新たな解釈を加えた。従来の37mm径からサイズアップし、さらにイージークリップ機能でほかのベルトへ簡単に交換できる。持ち前のヴィンテージテイストを崩すことなく、より現代的なスタイルになった。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール、K18=18金、YG=イエローゴールド、PG=ピンクゴールド
MACHIO、川田有二、鈴木泰之=写真 菊池陽之介、松平浩市=スタイリング 柴田 充、髙村将司、増山直樹=文 たむら 亘=イラスト


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