ユニークな特殊機能を備えた超稀少モデル
追いかけても追いかけても手が届かないどころかお顔も拝見できないモデルが多数存在するヴィンテージウォッチの世界。
ロンジンのミリタリーウォッチにも、それに該当する時計がいくつかあるが、そのどれもが特殊な機能やエピソードを持ち、それらが付加価値となっているのが面白い。
第二次世界大戦後、イギリス空軍はパイロットウォッチ「マーク11」を、IWC、ジャガー・ルクルト、ロンジンの3社から調達している。なかでもロンジンのモデルは“幻”と囁かれるほどの稀少性が高い。
そのほかの「マーク11」との決定的な違いは、明らかに大型のケースにある。
他社の35~36mmのケース径に対して、ロンジンは44mm径。これは、当時の軍用時計としては超大型の部類だ。
しかも高性能を求められたモデルゆえに、2重ケースの耐磁性能に加え、時代の先端を行くハック機能(秒針停止機能)と、最高クラスのスペックを有している。
・ロンジン=ウィットナー ウィームス 旧日本軍 ラージケース旧日本軍は精工舎製の時計を多様していたが、初期のごく少数だけロンジンからも調達していた。空兵用の天測時計「ウィームス」はその好例だ。
リュウズを引いて回すとインナーレジスターが回転する仕組みで、これによりさまざまな計測ができる特殊機能を備える。また、時間の調整は懐中時計の名残である“ダボ押し”で行う。
925シルバーを使用したケースは唯一無二の存在感を醸し出している。
・ロンジン 航空自衛隊 センターミニッツ・ストップセコンド パイロットウォッチ最後に登場するのは、航空自衛隊及び海上自衛隊に最初に支給されたクロノグラフだ。
47mm径の大型のパイロットウォッチは、飛行服の上から装着できることを前提に、計器としての視認性をとことん追求。
ストップセコンド機能のクロノグラフは、常に5本の針が稼働、2時位置のプッシュボタンを押すことで、クロノグラフ針と60分積算計が帰零する。ボタンを離すと再稼働し、半押しすることで、一時的にストップすることができる。
戦禍で生まれた特殊機能やデザインは、時代をまたぐ文化として、人々を魅了する。
その道を極めたロンジンのミリタリーウォッチは、機械式時計の心地良いビートを刻みながら、オーナーに所有する喜びと豊かな時間を与えくれる。
[取材協力]
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https://curious-curio.jp「ミリタリーウォッチ ブートキャンプ」とは……軍用を出自とするミリタリーウォッチは、国や時代、用途などによって驚くほど奥が深い。そんな一朝一夕には語れない世界に飛び込む“新兵”へ向けた短期集中訓練(ブートキャンプ)。
上に戻る ※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
戸叶庸之=編集・文