OCEANS

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2020.08.22

時計

散財王・安藤さんとOCEANS時計担当が初対談! テーマは「ブラッシュアップ」された新作ウォッチだ

各社の花形であるマスターピースに多く見られる変化は、ちょっとした“ブラッシュアップ”だ。ではその違いとはいったい?
僕らを大歓喜させるその本質を時計を主戦場とする編集者、安藤夏樹さんとともに明らかにしていこう。
賢者が教える! マスターピース放談
編集者 安藤夏樹さん Age 45
1975年、愛知県生まれ。ラグジュアリー誌の編集長を務めたのちフリーランスに。当時よりスイスの時計見本市を取材。「散財王」を目指し、時計、家具、服を日々ゲット&リサーチ。
OCEANS時計担当 藤井健人 Age 32
1988年、静岡県生まれ。「ムーブメント!? 何それ。美味しいの?」というズブの素人が、今や約10年間高級時計を見続ける。初めて手にした時計は両親に買ってもらったベイビーG。
 
IWC アイ・ダブリュ・シー/ポルトギーゼ・クロノグラフ
腕時計SSケース、41mm径、自動巻き。79万5000円/IWC 0120-05-1868、ニット2万4000円/ドルモア(ビームス 六本木ヒルズ 03-5775-1623)
バーガンディのダイヤルカラーで元祖“大ぶり”の魅力が再燃
IWC
アイ・ダブリュ・シー/ポルトギーゼ・クロノグラフ
1998年の登場から大ぶり時計の人気に火をつけた縦2つ目クロノのロングセラー。ポルトガル商人がマリンクロノメーターの精度を求めてオーダーしたというストーリーも大ぶりである理由を裏書きする。ブランドを代表するモデルを複数持つIWCにおいても、特にアイコニックな存在だ。
昨年自社キャリバーに改められた新型に、今年はバーガンディのダイヤルカラーがラインナップ。薄いベゼルに広く取られたダイヤルいっぱいに、妖艶な輝きを放つ。
藤井 新作の中で、今年特に目についたのは、マスターピースの変化です。
安藤 マスターピースを定義するなら、ブランドを代表するような、アイコニックな存在ですかね。もっと具体的に条件を整理すると、大きく3つのことがいえると思います。まずは、時代やシーンを超越して愛用できるデザイン。「○○っぽいね」といわれる際の「○○」のほう。
次に、実用性の高さです。高級時計には、弩級のコンプリケーションもありますが、仕事でも遊びでも程良く日常使いができるもの。防水性能を持つタフな作りで、使いやすい。そんな要素を持つ時計がマスターピースと呼べるのではないでしょうか。
藤井 実用的だからこそ、ブランドの人気を牽引しているんですね。
安藤 最後は、ストーリーがあるという点。長く続くメーカーが存在する一方で新興勢力も多い。そうしたなかにもマスターピースは存在していて、新旧のそれらに共通するのは、モデルの存在意義を確かにするストーリーがあるということです。
藤井 やはり高級なものですから、そこに共感できるか否かが鍵になりそうですね。さて、今回取り上げている時計は、根本は変えずに細部を変更して新作としています。
[Keyword 1] 最新ムーブメント 
JAEGER-LECOULTRE ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール・デイト
ケース厚8.78mmで着け心地も良好。SSケース、40mm径、自動巻き。72万4000円/ジャガー・ルクルト 0120-79-1833
“普段使い”という方向性を明確化
JAEGER-LECOULTRE
ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール・デイト
業界でも一目置かれるマニュファクチュールによる薄型ラウンドの定番「マスター・コントロール・デイト」。スペックをいっそう実用的にすべく自社ムーブメントが進化。
そのハイライトは、現代の時計には不可欠な耐磁性能を高めるシリコン製脱進機の搭載と、70時間というパワーリザーブの延長だ。さらにブラウンのカーフストラップを採用し、より現代的な顔立ちに。「デイリーに使える時計」という立ち位置を明確化させた。
安藤 こうした傾向は、実は、今年が特別というわけでもないんです。2008年のリーマンショック以降からでしょうか。
藤井 好景気からの反動?
安藤 はい。それまで冒頭にも触れたような超高級モデルは、どこかにぶっとんだところがありさえすれば売れていたんです。ところがそれ以降は、お金を持っている人でも時計への出費が減少して、不変的なものを求める傾向に。そこでブランドは自らの歴史を遡り、マスターピースの再構築を始めたんです。
藤井 彼らも大きな財産であると認識したんですね。
安藤 今ある資産をどう育てるかにシフトした結果でしょう。


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