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時代に翻弄されながら、世界的ラグジュアリーブランドへ

市販車を販売するようになったといっても、生産台数的には小さな自動車メーカーから脱せずにいた。ついに経営が逼迫すると、まず1966年にはシトロエンと業務提携を結ぶ。
しかしシトロエン自体も経営が悪化。するとクライスラーや自身の自動車メーカーも持っていた実業家のデ・トマソに救われ、1975年に正式に傘下に収まった。
このデ・トマソ体制で1981年に発売された「ビトゥルボ」は、ブランドで最もよく知られ、大きな成功を収めたモデルのひとつとなった。
「ビトゥルボ(Biturbo)」はイタリア語でツインターボの意味。この2台のコンプレッサーは、石川島播磨重工のものが採用された。「ビトゥルボ」のヒットで、多くの派生車種が誕生した。
しかし、次はデ・トマソ自体の経営が厳しくなってくると、1993年にフィアットがマセラティの株式を購入し傘下に収める。かつての宿敵、アルファロメオやフェラーリと今度はグループ会社の盟友となったわけだ。
1997年にはさらに同グループのフェラーリの傘下というカタチになったが、これがマセラティ車の更なるクオリティ向上に繋がった。
1998年に再びジウジアーロがデザインした「3200GT」で新生マセラティがスタート。2004年には、半世紀ぶりにピニンファリーナが手掛けた5代目「クアトロポルテ」がデビューし、元イタリア大統領の愛車になるなど商業的に大成功を収めた。
5代目「クアトロポルテ」は、当時ピニンファリーナに所属していた奥山清行によるもの。エンジンのベースはフェラーリ「F430」とベースを同じくしたV8 4.2Lを採用している。
2005年からはフェラーリを離れアルファロメオと統合。高級モデルの少数生産から積極的な拡大戦略へと転換し、メルセデス・ベンツやBMWといった世界市場で戦うラグジュアリーブランドをライバルとしていく。2016年には、マセラティ初のSUVである「レヴァンテ」が発売。ライナップの拡充もあり、新車販売台数はさらに増加している。
2020年、マセラティはすべての新モデルで「革新的で卓越した性能を実現する電動化技術を採用する」と発表。
ブランド初の100%電気自動車の生産は2021年から開始するとしている。レースを祖業に持つスーパーカーブランドから、多くのライバル会社との提携や資本変更を経てラグジュアリーブランドへと進化したマセラティ。2020年は、その未来において非常に重要な年になりそうだ。


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