考えて見れば、100年以上も前から乗られてきたガソリン車やディーゼル車に対して、EVはまさにこれから。
特に初めて乗ると、エンジン車とはまったく異なる乗り心地にきっとビックリするはずだ。当たり前だが、エンジンのない車内はとても静かで、アクセルを踏み込むと、かすかにモーター音を響かせながら想像以上にパワフルに加速する。
すぐに慣れて、アクセルペダルだけで加減速が気持ち良くできるようになり、ほとんどブレーキペダルを踏まなくなる。先述のように見た目はガソリン車とほぼ同じだけど、「あ、これは新しい乗りものだ」と気づくはず。
自宅のガレージに充電器だけでなく、太陽光発電まで備えれば、EVのエネルギーを自家発電できるし、停電時にはEVのバッテリーに貯めた電気を使って、家の中のテレビやエアコンを使うこともできる。
これってまさに、車との新しい生活様式。
先ほどの六本木ヒルズじゃなくても充電施設は全国に3万カ所以上ある。実はこの数値、ガソリンスタンドとほぼ同じ。
一方で、どうせそのうちEV生活の時代がやってくるなら、その前に新型「208」のガソリン車を堪能する、という考え方ももちろんアリ。プジョーの名車「205」をルーツとする、フレンチコンパクトをガソリン車で乗れるのは、もしかしたらラストチャンス、かもしれない。
週末に峠まで出かけてタイトなコーナーを、高まるエンジン音とともにひらりひらりと走り回るのは、ガソリン車ならではの楽しさだ。
パリでは2024年にディーゼル車が、2030年にガソリン車も乗り入れを禁止する方向だ。ドイツは2030年までに、フランスとイギリスも2040年までにディーゼル・ガソリン車の販売を禁止する方向で動いている。
EV化を強力に推し進めるノルウェーでは、2019年の新車販売台数の40%以上をEVが占めた。
こうなると、車の世界ではもうすぐ新しい生活様式が始まるだろう。「e-208」でそれを先取るか、「208」で今のうちに胸高鳴るエンジンを堪能しておくべきか。どちらを選ぶかが、大きな問題だ。
籠島康弘=文