まずは「事業自体のDX」が本筋
そもそも、事業のDXが進んでいなければ、働き方を変えることなどできません。それをコロナの影響を受けてテレワークを無理やりやってみたところ、なんとかなったということで、「じゃあ、これからは働き方もDX推しでいこう」というのではあまりに短絡的です。
物事には順序があり、まずは事業そのもののDXを推し進めたうえで、それに従ってようやく働き方も無理なくDXとなるというものです。また、事業のDXが遅れていたとすれば、それは上司を含めた経営層がその判断が遅れていたからでしょう。
事業のDXが遅れているのに、働き方だけ進めてもむしろ効率的でない場合もあり、事業のDXをさらに遅滞させてしまう可能性だってあります。
働き方に関しては慎重な合意形成を
確かにコロナによる社会経済の遅滞は、リアルをベースにビジネスを行うことのリスクを顕在化させ、ビジネスのDXの重要性を改めて認識させられました。ですから、経営幹部であるマネジメント層としては、あらゆるDXを可能な限り推し進めたくなることもわかります。
ビジネスはスピードが命ですから、思い立ったら改革を始めることも大事です。ただ、ことテレワークなどの働き方のDXに関しては、社員個々の価値観や家庭の事情などが強く関係しており、事業上どうしても必要だとしても、すぐには納得いかない場合もあります。
人事制度を作る際には、長い時間をかけて社員の意見を聞いたうえで、合理的な説明を納得行くまでして、全社の合意形成をするはずですが、同じぐらいの慎重さが新しい働き方を決める際にも必要です。
スピードは早めたいが拙速ではいけないと、難しい経営判断ですが、うまくバランスを取らなければ、せっかく正しいことを進めても、社員の不満が募ってうまくいかないということになってしまっては本末転倒ではないでしょうか。
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ「20代から好かれる上司・嫌われる上司」組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった
「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
上に戻る 曽和利光=文 株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長 1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。 |
石井あかね=イラスト