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今でも人気絶大な“伝統の空冷エンジン”

1993年、伝統の空冷水平対向6気筒を搭載してタイプ993はデビューする。ちなみにポルシェにとって空冷エンジン、つまり水ではなく走行時の風を利用してエンジンを冷やす方式が、なぜ“伝統”なのかといえば、ポルシェの創始者であるフェルディナント・ポルシェが最初に作った車「フォルクスワーゲン・タイプI(つまりビートル)」にまでさかのぼる。
ツインターボ+4WDの「911ターボ」の最高出力は408ps。430psのターボSや、後輪駆動のGT2、300psの3.8Lを積むカレラRSなど、高性能バージョンも次々と追加された。
「ビートル」、そしてポルシェ社として初の量産車「356」に搭載したエンジンはもちろん、空冷水平対向4気筒だ。フェルディナントが亡くなったあとも、ポルシェ一族は「356」に約17年間に渡り4気筒エンジンを搭載し続けるが、17年も経てば周りのライバルたちの性能も上がって当然だし、また4気筒ではやり尽くした感もあり、「356」を空冷水平対向6気筒の「911」へと発展させた。
今も「911」はRR(リアにエンジンを置き、後輪を駆動)方式で、水平対向エンジンを搭載するという、「ビートル」以来の伝統を守り続けている。違うのはタイプ993の後継、タイプ996から「水冷」になったという点くらいだ。
しかし今でも「空冷」にこだわるファンは多く、タイプ993は「最後の空冷」というプレミアム感を備えるがゆえに、中古車価格は高値安定中。生産中止から20年以上経つモデルとしては異例の価格となっている。
エンジン性能だけでなくボディバリエーションも豊富。通常のクーペのほかにカブリオレや、スライド式ガラスルーフを備えたタルガ(写真)などがあった。
もちろん現行の車よりは少し気難しくて、自分の運転技量がハッキリとわかるタイプ993の「911」。未だに高値と聞くと、もう少しお金を貯めて「最新のポルシェが最良のポルシェ」を体感しようかなとも思う。
けれど現行型のタイプ992のサイズ(4519mm×全幅1852mm×全高1300mm)を見ると、やっぱり人生に一度は、あの小さくてタイトなポルシェを“着て”みたくなるのだ。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。上に戻る
籠島康弘=文
※中古車平均価格は編集部調べ。


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