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2020.06.26

ファッション

167年の歴史を持つ仏ブランド「エーグル」のレインブーツの底力

レインブーツの大本命にして、ゴムを使ったシューメイキングの草分け的名門。
その長い歴史、素晴らしき機能性、そしてそれを愛する人々について知ると、大人が雨の日にエーグルを絶対に履くべき理由が見えてきた。
 

機能である、美である、エーグルのブーツである

エーグルのラバーブーツをひと目見て、革新的だと感じる人はそう多くないだろう。
1万8000円/エーグル 0120-810-378
「エーグル」のブーツ
膝下までカバーするハイトとフィット感を調整するバックルがアイコニックな天然ゴム製の「ベニル」。伝統的なハンティングシューズに着想を得た、エーグルの象徴的モデルだ。いつ見ても古さを感じない、上品なカントリースタイルだ。
エーグルのラバーブーツをひと目見て、革新的だと感じる人はそう多くないだろう。深い色みで、装飾も少なくシンプルな佇まいに、機能を前面に押し出しているわけではないから。しかし、それこそがこのフレンチブランドが優れていることの何よりの証しなのだ。
エーグルがフランス中部の街、モンタルジで創業した1853年当時、ほとんどのフランスの農民の作業靴は木製だった。当然、作業後の足は泥にまみれていて、足腰に激しい負荷が掛かっていたことは想像に難くない。
そんな状況下で、安定した加工法が確立されてまだ10年ほどだったゴムを使ったブーツ作りにチャレンジしたのがエーグルの創業者、ヒラム・ハッチンソン。そして、そのブーツは今も当時とほぼ変わらない製法・デザインでハンドメイドされている。
つまり、現代人にとって当たり前の存在になったラバーブーツ作りを、スニーカーが生まれるずっと前から続けてきたのだ。
アントワープ郊外にある自邸の庭を歩くドリス・ヴァン・ノッテン。こちらは彼を追ったドキュメンタリー『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
アントワープ郊外にある自邸の庭を歩くドリス・ヴァン・ノッテン。こちらは彼を追ったドキュメンタリー『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』(発売/アルバトロス)でのワンシーン。 ©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE
足元をしっかり水や泥から守ってくれる安心感とクッション性に富んだ快適な履き心地、そして時代を超える洗練されたデザインに魅せられた人は数知れず。
美しい柄使いで世界を魅了するドリス・ヴァン・ノッテンがオフタイムに草木を愛でるときに身に着けているのも、そのシンプルな佇まいに惹かれたからだろう。
昨年のカンヌ国際映画祭にて、エーグルのレインコートに袖を通して出席したのはパリ生まれの女優、マリオン・コティヤール。
ウェアももちろん高品質。昨年のカンヌ国際映画祭にて、エーグルのレインコートに袖を通して出席したのはパリ生まれの女優、マリオン・コティヤール。母国への敬意を感じるエピソード。 © Iconic/Getty Images
気取らず、でも確かな機能を持ちながら、足元を支えてくれる。名作レインブーツが167年を経ても「特別に見えない」ことのすごさを、きっとこれから雨が降るたびに我々は思い出すことだろう。
 
山本雄生=写真 松平浩市=スタイリング 今野 壘=文


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