本格オフローダーからラグジュアリーオフローダーへ
搭載されるエンジンの排気量が3L以下だった頃は、同社のセダンと比べたら質素なインテリアだったが、5L V8エンジンを搭載した500Eが登場したり、名称が「Gクラス」と変更された1993年あたりから、次第に高級化志向が強まっていく。
フェラーリやランボルギーニが載せるような6L V12ツインターボまで積む頃(2012年)には、もはやGクラスは名実ともに世界のセレブリティが求める高級SUVになっていた。
豪華になったとはいえ、見た目やサイズは1979年の頃からほとんど変わらない。角張ったスタイルだし、旧型の後期型ロングボディでさえ今のCクラスセダンと比べて全長・全幅はコンパクトだ。
約40年ぶりとなるフルモデルチェンジで2018年に登場した現行型は、旧型の後期型と見た目の違いが素人には見分けがつかないほど。それだけあの「ゲレンデ」は完成されたデザインだということだ。
もちろんこの見た目だけでも十分ミリタリー感があるし、車内で快適に過ごせる旧型の後期モデルは今でも十分ファミリーユースに使えるだろう。
ただ、もし多少の故障も味として厭わないならば、Gクラスとなる前、「ゲレンデヴァーゲン」の頃の一台を愛車にしてみたい。
車に詳しくない人に「ゲレンデ」と呼ばれても、「そうですよ」と正々堂々答えられるし、軍隊にも採用されるほどの究極のプロツール感が、当時のそっけないデザインと相まって今にはない独特の味わいを持つ。
古いのはちょっと怖いなと思うなら、Gクラスでもショートボディや屋根の開くカブリオレを選ぶと、ミリタリー感と乗用車感のちょうどいい塩梅を味わえるはずだ。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980〜’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。
上に戻る 籠島康弘=文
※中古車平均価格は編集部調べ。