1976年にフランスで公開されたクロード・ルルーシュ監督の『ランデヴー(C’était un rendez-vous)』は、フランスカルチャーを語るのに欠かせない映画だ。
その新作とも呼べる作品がつい先日、フェラーリとモナコ公国全面協力のもと、撮影されたという。
早朝のパリでゲリラ撮影された前作は「同じ映像はもう二度と撮れない」と言われていたが、40年以上も経った今、なぜまた撮影がおこなわれたのか? しかもパリではなくモナコで。
そこには意外な理由があった。
70年代のフランスで、旧来主義への反発から生まれた「ランデヴー」
映画を見るなら「フランス映画さ」と甲斐バンドが説き、フランスの名優ジャン・ギャバンが咥えているタバコ、ゴロワーズを「吸ったことがあるかい?」とムッシュかまやつが問いかけたのが1975年。
その翌年の1976年に公開された、わずか約9分のショートフィルムがクロード・ルルーシュ監督による『ランデヴー』だ。
公開は1976年だが、製作はその約10年前の1965年といわれている。その翌年にルルーシュは『男と女』を発表。同作はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝き、彼の名は一気に世界へ広まった。
ランデヴー、直訳すれば“男女のデート”の舞台はまだ薄暗い早朝のパリ。疾走する車のフロントバンパーに取り付けられたカメラが写す、地面すれすれの風景だけが画面に広がる。凱旋門、コンコルド広場、ルーブル、シャンゼリゼ……。赤信号はすべて無視、路上の鳩を蹴散らし、スッと現れたゴミ収集車を間一髪、歩道に乗り上げてクリアする。そして……。
この映像が公開された1970年代のフランス映画界は、ジャン・リュック・ゴダールやエリック・ロメール、フランソワ・トリュフォーといった若手監督が活躍するヌーヴェルヴァーグ運動の只中だった。旧来の脚本重視へのアンチテーゼとしてロケ中心、同時録音、即興などの手法を用いるのが特徴で、だから早朝のパリで一発撮りの『ランデヴー』も、ヌーヴェルヴァーグの一作品とされているのだ。
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