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ルルーシュ監督が唯一撮り直した、エンジン音

しかし、エンジン音だけは「同時録音」ではなかった。カメラがくくりつけられたのはルルーシュの愛車、メルセデス・ベンツの「450SEL6.9」といわれている。当時のSクラスの最上級グレードで、後席の広いロングストレッチバージョン。“魔法の絨毯”と称される乗り心地を供する、シトロエンが開発したハイドロニューマチック・サスペンションが同社で初めて採用されたモデルだ。
カメラにジャイロを備え、さらに魔法の絨毯たる「450SEL6.9」を用いたのは、走行シーン(しかない映画)のカメラのブレを抑制するためだろう。しかしメルセデス・ベンツ製の6.9L V8エンジンの音は、ルルーシュにとっては物足りなかったようだ。
そこで彼が差し替え音として選んだのがフェラーリの「275GTB」だったという。
フェラーリ「275GTB」。スタイリングはピニンファリーナ。
「275GTB」は、レースカーをベースに市販車を作ってきたフェラーリが、初めて最初から市販を目的に設計したモデルだ。
3285ccのV12エンジンが、早朝のパリで奏でるそのサウンドは…… 『ランデヴー』の映像で確認してもらえれば、賢明な判断だったと解るだろう。


3/3

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