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マニアも唸る復刻時計の登場

ところがである。
近年、この状況に大きな変化が出始めている。オリジナルと同様、またはそれ以上の魅力を持つ復刻モデルが登場し始めたのだ。
そのことを世に大きく知らしめた出来事のひとつが、2017年に発表されたオメガの「オメガ 1957 トリロジー」の発表だろう。これは、1957年にオメガが発表した3つのマスターシリーズ「スピードマスター」「シーマスター300」「レイルマスター」の60周年を記念して発表された復刻時計だ。
以前オーシャンズでも紹介した「“オメガ 1957 トリロジー”レイルマスター マスター クロノメーター 60周年リミテッド エディション」。
この復刻版がかつての一般的な復刻時計と大きく異なる点は、デジタルスキャナなどの最新技術を用いることで、オリジナルそのままの形を再現している点にある。「オリジナルが欲しいけどプレミアがつきすぎて手が出ない」「状態が良いヴィンテージが見つからない」といった時計好きたちが、十分に納得できるだけの雰囲気を手に入れている。
しかも、魅力はそれだけに止まらない。見た目はオリジナルと同じなのに、中身のムーブメントや、ケース磨きなどの細かな仕上げは、オリジナルを超えるスペックであるということだ。これにより、単に昔と同じものを作るだけでなく、現代の高級時計に求められる価値観に合った復刻時計が誕生した。
現在、多くのブランドが、こうした気合いの入った復刻時計の生産に乗り出している。それは高級時計の世界に限ったことではない。例えば近年「大人ができるデジタル時計」として人気を呼んだセイコーの「ジウジアーロ」シリーズの復刻などはまさにその好例と言っていい。
こちらは、以前に安藤さんが紹介してくれたジウジアーロデザインの腕時計たち。復刻時計としての“名作”も、数多く生み出している。
車をはじめとするプロダクトデザインの巨匠、ジョルジョット・ジウジアーロが1980年代にデザインしたその美しいデジタル時計は、ケースデザインもさることながら、余白を生かした絶妙な液晶表示がなんと言ってもキモだった。
ただ、機械式とは異なり、デジタル時計は単価が安い割にメーカー側の初期投資は小さくない。そのため、復刻するとなるとある程度のロット数をこなす必要が出てくる。だから、完全なる復刻版は難しいだろうと、コレクターの間では囁かれていた。
こちらも以前安藤さんが紹介してくれた、セイコーのドライバーズウォッチをビームス別注で2018年に復刻された時計。当時のデザインをゴールドで見事にアップデートした名作だという。
それをセイコーはやってのけたのである。しかも3万円代という低価格帯で。かつて「ジウジアーロ」シリーズをすべて集めた経験のあるぼくが実際に購入し、コレクションに入れていることでその実力を理解いただけるのではないかと思う。


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