首都圏の子供はサプリメント摂取率が高い
下の図をご覧ください。小学校から高校の一般の生徒を対象に行われたサプリメント利用経験の調査です。2009年は高校を除けば20%に満たないという結果が示されています。
サプリメントやプロテインといった補助食品の蔓延は、前述のアメリカほどではないことがわかります。
しかし、スポーツ団体に参加する子供たち(小学4〜6年生)を対象に、首都圏(東京)と地方都市(三重)を比較すると(下図)、首都圏のほうがサプリメント等の摂取経験が高い傾向にあることがわかります。
また、この首都圏の子供たちにサプリメント摂取を勧めた人の約40%は親だといいます。これには普段耳にする情報の量や商品の購入しやすさなども影響しているかもしれません。
サプリメントやプロテインなどの健康補助食品や、特定保健用食品などは、特定の成分を濃縮して人工的につくられたもの。したがって、普段の食事をしっかり摂った上での利用が前提です。
サプリメントやプロテインばかり摂っていると、噛む作業量が減ることで顎や歯が弱くなり、健康を害してしまうことも考えられます。サプリメントはあくまでも「補助」するものです。食事から栄養素を摂ることがいちばん自然であり、「補助」に任せっきりでは、プラスの効果が得られないことを忘れてはいけません。
親や年の離れた兄弟の食習慣は小さな子供に強く影響します。安易にサプリメントに頼ることを覚えると、子供の食に対する興味・関心を薄れさせ、健康的な食生活を送るうえでの妨げになる恐れがあります。子供の1日の生活リズムは、食事によって作られていると言っても過言ではありません。簡単に栄養を摂取できしまうサプリメントだけでは、成長に大切な生活リズムや健康状態まで崩してしまうことも考えられます。
子供の体は、大人とは比べものにならないほどセンシティブです。大人基準でつくられたサプリメントやその摂取方法が、感受性豊かな子供の体と生活のリズムを崩していく可能性があるものだとしたら、お子さんにサプリメントやプロテインを与えるでしょうか? 子供たちの心と体が十分に成熟し、自分の体のことに関して責任を持てるようになったら、その時はよく学習した上で大いにサプリメントを活用すれば良いと思います。
「子供のスポーツ新常識」子供の体力低下が嘆かれる一方で、若き天才アスリートも多く誕生している昨今。子供とスポーツの関係性は気になるトピックだ。そこで、ジュニア世代の指導者を育成する活動を行っている、桐蔭横浜大学教授の桜井智野風先生に、子供の才能や夢を賢くサポートしていくための “新常識”を紹介してもらう。
上に戻る 連載「子供のスポーツ新常識」一覧へ桜井智野風=文 桐蔭横浜大学 教授。同大大学院スポーツ科学研究科長。運動生理学 博士。骨格筋をターゲットとしたスポーツ科学・生理学的な研究を専門とする。公益財団法人 日本陸上競技連盟 指導者育成委員会コミッティーディレクター。スポーツの強化策としては、「ジュニア世代と接する理解ある指導者や親を育てることが一番重要である」という考えのもと、ジュニア対象の指導者育成のために全国を飛び回っている。 |