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世界戦略車であるレガシィが牽引した1990年代

スバルには、水平対向エンジンにならぶ代名詞がある。それが、四輪駆動だ。1972年には、世界初の量産型乗用四輪駆動車「レオーネ4WD エステートバーン」を発売。これが、スバル中興の立役者にして世界戦略車である「レガシィ」へと続いていくのだ。
二輪駆動に比べて倍のタイヤに駆動力を伝えられる四輪駆動は、安定走行に有利だっただけでなく、速く走るという点でもメリットがあった。
初代レガシィ
初代「レガシィ」。連続で10万kmを走り続ける「10万km世界速度記録チャレンジ」では、19日間連続で走り続け、当時の世界記録を樹立した。
1989年にデビューしたレガシィは、WRC(世界ラリー選手権)での活躍やワゴンブームなど新たな時代を築いた。その実力は世界で認められ、北米でも大ヒット。現在、スバルの売上げ台数の約7割はアメリカ・カナダの北米が占めるが、この躍進はレガシィから始まったのだ。
1992年には「インプレッサ」を発売。レガシィの後を継ぎWRCに参戦し、1997年には、日本メーカー初の3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。
初代インプレッサ
初代「インプレッサ」。ボディタイプはスポーツワゴンとセダン。いずれもコンパクトサイズだった。写真はスポーティモデルの「WRX STi」。
レガシィとインプレッサを二本柱とし、独自の技術で唯一無二の自動車メーカーとして人気を博すスバル。
WRCに裏打ちされた走行性能に惚れ込むファンや、ツーリングワゴンとしての使い勝手に魅了されたアウトドア好きやサーファーなどから幅広い支持を得て、1990年代には、熱狂的なファンを指す「スバリスト」なる言葉も定着してきた。
 

アイサイトで得たスバル=安全というイメージ

水平対向エンジンと四輪駆動。この2つに続き、スバル3本の矢として生まれたのが「EyeSight(アイサイト)」と言えるだろう。
今ではどのメーカーでも当たり前に搭載される衝突被害軽減ブレーキだが、2010年に国産車で初めて国から衝突被害軽減ブレーキ搭載車の認可を受けたのは、スバルの「レガシィ」シリーズだ。
プリクラッシュブレーキや全車速追従機能付きクルーズコントロール、アクティブレーンキープなどを搭載し、「ぶつからない車」としてブレイク。WRCでの活躍で「走りのスバル」という印象の強かったスバルは、創業以来追い求めてきた「安全性」というイメージも手に入れることになったのだ。
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[現在の主な車種]

・レガシィ アウトバック


「レガシィツーリングワゴン」の車高を高めたSUVモデル。1994年にSUV人気の高い北米市場向けに開発され、翌1995年に日本でも「レガシィグランドワゴン」として販売された。その後日本では「ランカスター」と名称が変わり、2003年から世界統一で「レガシィアウトバック」となった。
現行型は2014年に登場。同時に日本では「レガシィツーリングワゴン」が廃止された。水平対向エンジンは2.5Lと3Lが用意され、全車4WDとなる。
 

・レヴォーグ


「レガシィ」シリーズが北米市場でヒットしたのを受け、次第に同市場向けにボディサイズが拡大されていく。そのため日本では大きくて扱いづらくなった。そこで日本市場向けに、グランドツアラーやスポーツカーの技術を融合させたスポーツツアラーとして開発されたのが「レヴォーグ」だ。
「レガシィツーリングワゴン」が廃止された2014年にデビュー。全車4WDで、水平対向の1.6Lターボと2Lターボエンジンが用意されている。
 

・フォレスター


北米では「レガシィ」シリーズが人気だが、実は世界規模で最も売れているのは「フォレスター」だ。現行型は2018年にデビュー。
スバル車の中で最もSUVらしいデザインや、オンロード/オフロードを問わない走行性能が与えられ、もちろん全車4WDで、アイサイトなど最新の先進安全機能が備わる。パワーユニットは2.5Lの水平対向エンジンと、2Lターボ+モーターのハイブリッドシステムが用意されている。
 

・XV


都会派SUVとして、コンパクトな「インプレッサ」の車高を高めて開発された。都会派といってもフォレスター並みのオフロード性能を備えている。現行型は2017年にデビュー。
水平対向の1.6Lと2Lエンジン搭載車のほかに、水平対向2Lエンジン+モーターのハイブリッドモデルも用意されている。全車4WDで、アイサイトを標準装備する点はほかのスバル車と同様だ。
 

・BRZ


トヨタと共同開発したスポーツカー。トヨタでは「86」の名前で販売されている。2L水平対向4気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動させるコンパクトFRスポーツカーだ。
「86」とはドライブフィールの味付けが異なり、改良を重ねる度にそれぞれ独自の色が強くなっていった。2012年のデビューで、2020年7月に予約を停止することを発表。フルモデルチェンジが近いことを匂わせている。
 
「車のトリセツ」とは……
走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る
林田孝司=文

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