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ロジェ・タロンにマーク・ニューソン……
いいデザインを生むデザイナーたち

「世界的なプロダクトデザイナーが担当したカジュアルウォッチでいうなら、BRAUN(ブラウン)やLip(リップ)もハズせません。前者は、バウハウスの流れを汲んだシンプルデザインが潔いドイツブランド。フランス生まれの後者は、より楽しげな印象です」。
シンプルなデザインが普遍性を持つ、ブラウンの腕時計。
ブラウンのデザインを確立したのが、ディーター・ラムス。オーディオなどで多くの名作を残し、数は少ないが腕時計のデザインも行う。“Less,but better(より少ない、しかしより良く)”との言葉通り、機能に即したシンプルなデザインが特徴だ。
「ラムスはアップルのデザイナー、ジョナサン・アイブにも大きな影響を与えた人物。彼のデザインしたデジタル時計は極めてシンプルですが、まったく飽きることがありません」。
一方のリップは1867年、フランスの時計製造の心臓部と謳われるブサンソンにて創業。かのナポレオンにも贈呈されるなどクラシックな時計作りを継承する反面、ユニークデザインの開発にも熱を入れ、1975年には左右非対称デザインの傑作、マッハ2000を生み出している。
安藤さんのコレクションの中から、リップの個性が光る3本。
「マッハ2000(写真上、中央)は、フランスの新幹線TGVのデザインも担当したロジェ・タロンの作品。ニューヨーク近代博物館(MoMA)にも飾られるほど、評価の高い時計です。当時リップは、他業界から優秀なデザイナーを呼んで新しい時計作りを始めましたが、その最大の成果がマッハ2000の完成だと思います。
復刻もされていますが、個人的にはやっぱりオリジナルが好み。僕は持っていませんが、手巻きのクロノグラフは最高です。写真のはそれに似せて作ったクォーツモデル。一見クロノのようですが、実はカレンダーとムーンフフェイズになっていて、上下のボタンはダミーなんです」。
ほかにも、アップル製品で知られるマーク・ニューソンによるイデーの時計や、彼とオリバー・アイクのコラボプロジェクトであるアイクポッドなどを推薦してくれた安藤さん。また、セイコーのシャリオも、コンパクトサイズながらに大きな存在感を示すという。
セイコー・シャリオの復刻モデル。“あの人”も愛用していた。
「シャリオは’80年代にリリースされた薄型の三針モデルで、完成度の高いミニマルデザインが特徴です。スティーブ・ジョブズが愛用していた時計としても有名ですね。3年ほど前に復刻されましたが、速攻で売り切れてしまったとか。やはり、年を経ても優れたものの求心力は変わらないんですね」。
完成されたデザインは、時代を経ても価値が変わらない。むしろその稀少性から、今後のさらなる高騰も予想できる。
そういう意味でも“デザインが面白い”のカジュアルウォッチは、大人にとって再考すべき時計と言えそうだ。次回は、カジュアルウォッチを楽しむもうひとつの視点「ギミックが楽しい時計」を安藤さんに紹介してもらう。
コスパ良しな「コレ買っ時計」とは?
複雑機構ならいいワケじゃない。有名ブランドならいいワケでもない。カジュアルに付き合えて大きなリターンがあるのが理想。見た目もコスパもいい「コレ買っ時計」を、さまざまな切り口で選抜。
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増山直樹=文


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