OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. たべる
  3. 学芸大学のビストロで、看板娘が「ナマハゲは怖さのレベルを選べる」と言った

2020.03.12

たべる

学芸大学のビストロで、看板娘が「ナマハゲは怖さのレベルを選べる」と言った

看板娘という名の愉悦 Vol.107
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
学芸大学の旅は続く。
学芸大学駅西口
前回は東口だったが今回は西口を出る。
徒歩2分で目指すビストロ、「えさけ Et Ca Qu’est」に到着した。
外観
パリの街角を思わせる外観。
いかにもフランス語のような「Et Ca Qu’est」だが、のちに小粋な語呂合わせだとわかる。
内観
店内には看板娘の姿が。
オープンは2019年7月。こじんまりとした空間だが、フランスのビストロで供される定番料理と厳選されたフランスワインが楽しめる。
電気暖炉
LEDライトの炎が揺れる電気暖炉が嬉しい。
さっそく、おすすめのワインを聞くと「アルザスのリースリングはいかがでしょう。和梨風味でやさしい甘めのワインです」。リースリングとは「気位が高く繊細」といわれるぶどうの品種。そして、味の表現にもやさしさを感じる。
「抽象的な表現ではなく、できるだけ皆さんが食べたことがあるもので説明しているんです」。グラスは800円。いただきましょう。
2/4

看板娘、登場

看板娘
「お待たせしました〜」。
こちらは店長の一海さん(26歳)。「ひとみ」と読む。いい名前じゃないですか。
「でも、常連さんは『もさみ』と呼びますね。この会社に入ってから駒澤大学にある『ビストロコンフル』という本店で働き始めたんですが、仕事ぶりがあまりにも“もさい”ので社長が名付けたあだ名が定着しました」。
しかし、着実に仕事と接客術を身につけ、晴れて2号店の店長に抜擢された。
過去写真
もさかった頃(5年前)の一海さん。
一海さんの出身を聞くと秋田県の男鹿半島。フランス語かと思った「Et Ca Qu’est(えさけ)」は秋田弁で「うちにおいでよ」という意味だった。そうなれば、ナマハゲの話を聞くしかない。
リースリング
2017年もののリースリングをいただきながら。
「本気で怖いから、男鹿の子供たちにとってはトラウマの対象ですよ。抵抗したお兄ちゃんがゴミ袋に詰められたときは、『あの強いお兄ちゃんが……』と頭が真っ白になりました」。
面白かったのは、ナマハゲ協会から「今年は入っていいですか?」という打診の電話が来るということ。
「赤ちゃんが生まれたばかりとか、よぼよぼの犬がいるような家庭は断りますね。あと、怖さの度合いも選べるんです。うちは最強レベルだったのでなおさら怖かったんでしょうね」。
ナマハゲに怯える幼少期を過ごした一海さんは、中学と高校ではバスケ三昧の日々を送る。高校卒業後に上京し、製菓調理専門学校に入学した。
学生時代の友人
同じ高校出身の親友とは今でも月に一度はランチに行く。
その後、三宿のイタリアンや渋谷のビストロを経て、現在の会社に転職。“もさみ”としてかわいがられ、立派に店を任されるようになった今でも、あだ名だけは残っている。
社員旅行の風景
社員旅行ではブルゴーニュのワイン生産者を訪問。
3/4

次の記事を読み込んでいます。