HOTする「出汁割」が五臓六腑に染み渡る
美味い出汁割ができるかどうかは、おでんの出汁にかかっている。出汁の旨味を損なわないよう、日本酒は、できるだけ味に特徴のない普通酒がいいらしい。
「皆さん出汁割を期待してきてくれるので、仕込みは本当に手が抜けないですよ」と羽根さんは笑う。
出汁のベースは昆布・煮干し・しいたけ・帆立。そこに種類豊富なおでんの具材から旨味が滲み出し、実に味わい深いおでん出汁が完成する。朝7時からスタートする仕込みがようやく終わるのは午後4時。出汁は毎日使い切りだという。
出汁割を飲むには、まずは「熱燗」を注文する必要がある。グラスになみなみ注がれた酒は口から迎えにいかなければならないが、猫舌は要注意。おでんの出汁と一緒に熱されていたので、かなり熱い。そしてグラスの残りが3分の2になったところで、いよいよ出汁を投入。いざ飲まん。
……
激ウマである。出汁の旨味と日本酒のふくよかさが絶妙なハーモニーを奏でていて、日本酒が得意でない人も飲みやすい。日本酒が五味(甘味・旨味・渋味・苦味・塩味)のなかで唯一持たない「塩味」を出汁が補い、ひとつの飲み物としてのバランスがより完璧に近づいている。
これはグラスを口に運ぶ手が止まらない。ああ、五臓六腑に染み渡る……! 至福。
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