人生いろいろだなあと思いつつ、ふと横をみると……。あれ、ホッピーだ。こんな洒落たカフェバーで出会えるとは。
赤い王冠が白、白い王冠が黒というのがややこしい。「うちはホッピー好きのお客さんが多くて、カウンター全員がホッピーを飲んでいることもよくあります」。
すかさずホッピーセット(640円)を注文した。
おばんざい3点盛り(750円)を添えて。ギョーザ入りあつあつ酸辣湯、キューリと人参の出汁マリネ、肉厚しいたけのバター醤油焼き。手の込んだ品々は、すべて沙織さん作だ。
末端冷え性の看板娘。カウンターでは常連の紳士たちがアメリカの大統領予備選について話している。
「ほら、何だっけ。あの民主党の若い候補。名前が難しくて覚えられないんだよ」。「ブディジェッジね」。ここで、沙織さんが「ジョコビッチみたいですね」と茶々を入れる。
手前の紳士は大森から通っているという。カウンターの反対側に若い男性が静かに飲んでいた。聞けば、沙織さんが兼務しているイタリアンレストランの後輩だという。
若いのに渋い飲み方をしていた。「沙織さんですか? いい意味でスタッフやお客さんを転がすのが上手い。基本やさしいけど、現場では影の王様というか裏ボス的な存在ですね」。
後輩のコメントを聞き流しつつ、ローソンのツイストドーナツを頬張る裏ボス。 4/4