OCEANS

SHARE

「燗酒」に向かない日本酒。その特徴は?

アルコール度数が高めの日本酒や香りが華やかな日本酒はキリッと冷やして飲むのが美味いのだ。
──なるほど。では、改めて熱燗向きの日本酒はどんなのでしょう?
遠藤 前提として、もともと熱燗で常飲されていた飲み物ですので、基本的にはどれも美味しいです。
──……なかなか教えてくれませんね(笑)。
遠藤 いえ、そういうわけではないのですが(笑)。日本酒は基本的に熱燗で美味しく飲めるお酒なので、先に“不向き”とされている種類を覚えておくといいかもしれません。
一般的に、香りが華やかなタイプや、アルコール度数が高いタイプ、それと加熱処理をしていない“生酒”が燗酒に向かないとされています。
温かくすると甘味や香りの成分がより引き立つようになるので、味わいのバランスが崩れて、甘ったるくなり過ぎてしまうことがあるんですね。
──なるほど。例えば「久保田」でいうとどのお酒ですか?
遠藤 「久保田 千寿 吟醸生原酒」という年に1回発売の、搾りたてフレッシュな味が楽しめる生酒なんかはそうですね。アルコール度数が19度と高く、冷たいままでも味わいにパンチがあります。
だからこそ、温度を上げるとさらにアルコールを強く感じ、エグくなってしまうという声がある。
このお酒は、生原酒の中でも後味がキレイなタイプなので、飲む30分ほど前に冷蔵庫から冷凍庫に移し、キンキンに冷やした状態で飲むのがおすすめです。また、度数が高いので、氷を入れてロックで飲むのもいいですよ。
──燗酒と真逆なんですね。
3/4

「燗酒」向きの日本酒の特徴は意外にも……

「久保田 碧寿 山廃仕込 純米大吟醸」は45℃で飲むことが公式で勧められている。
──……では、三度目の正直。熱燗向きの日本酒は?
遠藤 もっとも燗酒向きな日本酒は、うちで言うと山廃仕込(やまはいしこみ) 純米大吟醸の「久保田 碧寿(へきじゅ)」ですね。しっかりとしたコクや旨味が楽しめるのが特徴になります。
──え!? 純米大吟醸を燗酒に?
遠藤 そうですね。純米大吟醸はキレイな飲み口のものが多く、値段も安いわけではないので、燗酒にするのはもったいないと思われがちです。
しかし、温めたときに旨味が感じやすく、味わいも広がることから「お燗にして美味しい純米大吟醸」というコンセプトで作られました。
温度を上げるだけで日本酒の味そのものが変わったように感じるから不思議だ。
──この山廃仕込ってなんですか?
遠藤 山廃仕込は、伝統的な醸造方法のひとつです。お酒の元となる酒母に、空気中から自然の乳酸菌を取り込み、酵母を育てる製法です。アミノ酸などの旨味成分が残りやすいため、しっかりとした味の日本酒になります。
ちょっとこの「久保田 碧寿」を、常温と40℃のぬる燗で、飲んでみてください。
──いただきます。(ゴクッ……)常温も美味しいですが、熱燗はとても旨味を感じます。
遠藤 そうなんです。常温と比べると、コクや旨味、甘味が強調されますよね。ちなみに、温度を上げていくとアルコールの辛さが出てくるので、すっきりシャープな感じになっていきます。
山廃や生酛(きもと)造りのお酒は、乳酸、アミノ酸などの旨味をしっかり感じられるので、一般的に燗酒に向くと言われています。
4/4

次の記事を読み込んでいます。