HOTする酒●キンキンに冷えたビールが夏の醍醐味なら、冬には冬のそれがある。晩冬の寒ささえ風情として楽しめて、心も身体も温める、HOTする酒。
「日本酒」というと、キリッと冷えた冷酒をイメージすることが多いだろう。でも、そんなイメージが定着したのは割と最近のこと。実は、江戸時代まで春夏秋冬を問わず“熱燗”がスタンダードだったのだ。
でも、今は居酒屋のメニューでも「熱燗」と書かれているだけで銘柄は伏せられていたり、温めて飲む日本酒の美味しさは、イマイチ広まっていない気がする。せっかくの冬、五臓六腑に染み渡る燗酒を知りたい。
……ということで、今回は「銀座 久保田」を訪問。熱燗の真髄について「SAKE DIPLOMA」の資格を持つ、朝日酒造の遠藤憲悟さんに話をうかがった。
ぬる燗、上燗、飛び切り燗……“お燗”にも多くの種類あり!
──熱燗向きのお酒って、具体的にどういう味の日本酒がいいのでしょう?遠藤 まず、ひと言で“熱燗”と言っても、温度によって呼称が違います。燗酒は5℃刻みで名前がついていて、35℃は
「人肌燗(ひとはだかん)」、40℃は
「ぬる燗」、45℃は
「上燗(じょうかん)」、50℃は
「熱燗」、55℃は
「飛び切り燗」と呼ばれています。
一般的に、
日本酒の旨味やお米由来の甘さがいちばん感じられる温度は40度前後だと言われています。40度以上にしていくと、旨味部分は平行線を辿りますがアルコール感は強まっていき、ピリピリとした辛さを感じるようになってきます。
──燗酒を飲むと酔いが回るのが早い気がしますが、それもアルコール感が強くなるから?遠藤 アルコールは体温程度の温度になってから体に吸収される、という特徴があります。
冷たいお酒をグビグビと飲んで、あとから一気にフラフラになる、ということがありますよね? それは身体がアルコールを吸収するのに時間がかかるからなんです。
そうした観点で見れば、燗酒は吸収が早く、すぐに酔った感はあるかもしれません。ですが、そのぶんブレーキもかかりますし、体に優しいとも言えます。
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