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2019.12.17

ライフ

義肢装具士・沖野敦郎が語る職人の苦悩と現実。「教科書通りではつとまらない」

>連載「37.5歳の人生スナップ」を読む
「義肢装具士になることは、絶対に人にはオススメしませんね」。
蔵前駅から徒歩数分。こじんまりとした明るい工房の中で、義肢装具士の沖野敦郎さん(40歳)は、そう言って笑った。
沖野敦郎さん
義肢装具士とは国家資格であり、義足の採寸から製作まですべてを請け負う人のことである。また義足だけではなく、車椅子や杖などの福祉用具や、靴の中敷、コルセットなど製作の幅は広い。
その中でも沖野さんは、義足作りのスペシャリストとして、東京2020パラリンピック出場が期待されるパラアスリートの義足から、一般の人が日々使用するものまで、さまざまなスポーツ義足をたったひとりで製作している。
「義足を丸ごとすべて作る場合もあれば一部だけ製作することもあって、製作期間はまちまちです。大体、平均して週に1本、年間では50本ほど作っています」。
義足の製作のみならず、病院や競技場で、患者やアスリートへのフィッティングや装着角度の微調整などを行うことも。また月に一度は義足ユーザー対象のランニング教室を開催するなど、沖野さんの陸上と義足への想いはその活動内容からも伝わってくる。
そんな沖野さんが義肢装具士はオススメできないと笑うのはなぜなのか? その半生から紐解いていこう。


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