Watchの群像劇●ひと口に腕時計といっても十本十色の顔がある。それは歴史や外観、機構など多くの構成要素が複雑に絡み合うことで1本の腕時計が作られるからだ。本連載では腕時計が持っているさまざまな魅力を3つの視点からスポットライトを当てて紹介する。
今月の主役は「レトロなダイバーズウォッチ」。今も絶えず進化を続けるダイバーズだが、情緒や風情を閉じ込めたその佇まいに惹かれる。ここには登場する時計が繰り広げる群像劇がある。
Chapter 2 腕時計6本の佇まいケースや文字盤のデザイン、素材使い、ディテールワーク。一見同じようでいて、それぞれがまったく異なる腕時計。
素晴らしい腕時計には、唯一無二の存在感が宿っている。強い意志を持つかのように語りかけてくる、6本を厳選した。
OMEGA
オメガ/シーマスター 300 マスター コーアクシャル
レトロなデザインに受け継がれる進取の精神1957年に発表された初代「シーマスター300」は、水圧に応じて気密性を高める独自のナイアードリュウズと3重の防水システムにより、当時の潜水深度をはるかに超える200mの防水性能を誇った。
50年以上の時を経た現行モデルは、当時のフェイスやケース、ブレスレットのデザインを引き継ぎつつ、マスター コーアクシャルムーブメントを採用し、1万5000ガウスの高耐磁性を実現。スタイルばかりでなく、先進性も間違いなくそこに息づく。
BREITLING
ブライトリング/スーパーオーシャン ヘリテージ
B20 オートマチック 44 ジャパンリミテッド
最新技術を内に秘め、メッシュブレスが心地良い1950年代後半、スポーツやレジャーでのダイビングが一大ブームになり、多くのダイバーズウォッチが生まれた。’57年に登場したブライトリングの「スーパーオーシャン」もそのひとつ。
本作は当時のデザインをモチーフにし、ベゼルリングには耐傷性に優れるハイテクセラミックスを採用。そしてメッシュ状に組んだSS製ブレスレットを組み合わせる。内蔵する自社キャリバーB20は、チューダーのキャリバーMT5612をベースに独自に仕上げ、70時間のパワーリザーブを誇る。
RADO
ラドー/キャプテン クック オートマティック
素材のパイオニアの矜持を名デザインに注ぐウォッチデザインとは、ただ見た目だけでなく、フォルムとカラー、そしてマテリアルがバランス良く調和することで初めて永続的なものとなる。その証左となるのが、1962年のオリジナルモデルを復刻した「キャプテン クック」だ。
剣と矢を象った時分針に、カーブしたダイヤルは当時のスタイルを再現し、視認性にも優れる。さらに風防のサファイアクリスタルやグリーンのセラミックスベゼルには、先進素材のパイオニアであるブランドの技術を注ぎ、現代的な機能性を備えた。
SEIKO PROSPEX
セイコー プロスペックス/マリーンマスター プロフェッショナル SBDX025
最水深のコバルトブルーを文字盤とベゼルで表現1965年に国産初のダイバーズウォッチを発表したセイコー。早くもその3年後に発表したモデルが、当時世界最高峰のハイビートムーブメントを搭載したダイバーズであり、本作のスタイルはその時計がベース。
防水性や気密性を確保するためのワンピース構造のケースや4時位置のリュウズといったディテールを受け継ぎ、よりモダンで力強い存在感を演出する。また文字盤とセラミックスのベゼルには、日本で最も深い水深の田沢湖からインスパイアされたコバルトブルーを採用。
GLASHÜTTE ORIGINAL
グラスヒュッテ・オリジナル/SeaQ 1969
ブランド初のダイバーズが現代的な解釈で復活ジャーマンウォッチでもドレス系のイメージが強いグラスヒュッテ・オリジナルだが、歴史を紐解くと、マリンクロノメーターをはじめ、苛酷な環境下で使う精密時計も数多く手掛けていた。1969年に発表したブランド初のダイバーズもそのひとつであり、誕生50周年を機に復刻。
オーセンティックなダイバーズのスタイルに、大きめの数字インデックスや太い針が目を引く。ケースは当時の36mm径からサイズアップし、さらにベゼルはセラミックスに。モデル名の「Q」は、クオリティのQを表す。
ORIS
オリス/ダイバー 65
海への思いを込めたブルーのヴィンテージダイバーズさまざまな海洋保全活動をサポートするオリスの海との関わりは、1965年に発表した初のダイバーズから始まった。この時計をモチーフにした「ダイバー 65」は、ダイヤルデザインやドーム型風防など当時のディテールを綿々と受け継ぐ。
そして、針やインデックスには時を経て枯れたようなベージュカラーのルミノバを用い、極厚のレザーストラップとともにヴィンテージテイストを演出する。紹介しているブルーダイヤルは、これまでの42mm径と36mm径に加え、新たに40mm径のケースがラインナップする。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
川田有二=写真 柴田 充=文