時器放談●マスターピースとされる名作時計の数々。そこから6本を厳選し、そのスゴさを腕時計界の2人の論客、広田雅将と安藤夏樹が言いたい放題、言葉で分解する。「ラグジュアリーブランド編」となる今回の4本目は、グッチの「グリップ」。
安藤 グッチに関して言うと、2018年あたりから本当に面白い存在になりました。ブランド全体を取り仕切るクリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレの世界観が、とうとう時計にも浸透してきたな、って強く感じるようになったんですよね。
広田 2018年というと、安藤さん、ホログラムの「G-タイムレス」を推してましたよね。機能としては普通の2針のクオーツ時計なんだけど、文字盤とバンドにホログラムを施すことで、なんとも言えない不思議な存在感がありました。
|
安藤 「バーゼル・ワールド」(毎年スイスで行われる腕時計の世界的な見本市)で最初にあれを目にしたとき、これはヤバイなと(笑)。写真じゃわかりにくいけど、腕元が異空間に変わるというか、とにかく「何これ?」感が半端なかった。これは絶対、スーツに合わせたらウケるだろうなと……(笑)。
広田 ウケ狙い?
安藤 いやいや、楽しいじゃないですか。実際、ホログラムはかなり売れたみたいです。僕がグッチの時計を推してる理由は非常に明白で、時計でも「ちゃんとファッションしてる」からなんですよね。70年代から90年代くらいまでって、ファッションウォッチが面白かったんですよ、好き勝手にデザインしてて。でも、近年のラグジュアリーブランドの時計って、本格高級志向のものばかりな気がするんです。もちろん、それはそれで素晴らしいことなんだけど、全部が全部、同じ方向性じゃつまらないじゃないですか。
2/3