OCEANS

SHARE

こだわりの原点は、アメリカンカルチャー

じゃあ、自分にとってのこだわりの車って何だろう? と立ち返って考えたときに気づいたのが、学生の頃に憧れたピックアップだったというのだ。当時はモトリー・クルー、ホワイトスネイク、シンデレラ……。

深夜放送の番組から流れるアメリカのロックに夢中になった。アメフト部にも入ったし、ヒマさえあれば原宿や渋谷へ出かけてアメカジの服を探した、米軍基地のフレンドシップ・デーにもよく足を運んだ。車に興味を持つようになったそんな自分の原点を見つめ直してみると、学生時代に熱狂していたアメリカンカルチャーがあった。



あれだけ欲しくて、寝る間も惜しんで中古車情報誌を眺めたのに、たまたま縁がなく、何度もその手を滑り落ちていったピックアップ。「当時は見栄でも世間体でも自己顕示欲でもなく、若いなりに自分にこだわりを持って音楽やスポーツ、服や車にハマっていました。やっぱりそういうのがいいな、自分らしいこだわりを持って車に乗りたいな」と行き着いた先がタコマだった。

「こだわりというか、結局は自己満足ですけどね(笑)」。名取さんは取材時に何度も“自己満足”という言葉を使っていた。けれど、自分が満足できないんじゃ、何のために車に乗るのだろう?



人生80年だとすれば、折り返しともいえる40歳を超えた今、こだわりを持って生きていきたいと思うようになった名取さん。

こだわりを突き詰めれば、他人とは違う色が出てくる。人生を折り返したらなおのこと、たとえ車であっても生半可な気持ちじゃなく本当に満足できるものを選ぶべきなんじゃないか。名取さんからそう教わったような気がする。

前回の「俺のクルマと、アイツのクルマ」を見る
「70年代、西海岸の風が吹くから」15年経っても手放せないエルカミーノ


鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文



SHARE

次の記事を読み込んでいます。