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アメリカ市場向けの日本車を、そのまま日本で

学生時代の1980〜90年代にアメリカンカルチャーの洗礼を受け、当時からピックアップトラックに乗りたいと思っていたが、「縁がなかった」という。中古車雑誌で見つけて店へ行ってみたら、ひと足先に売れていた。やっと見つけて契約書にサインをしようとしたら親に反対された(※未成年者がローンを組む場合、親の同意が必要)……etc. そうこうしているうちに家族を持つと、ファミリーカーにトラックはないなと思い、以降忘れていたが、40代も半ばを過ぎた頃からトラックへの思いが再燃、46歳でようやく人生初のピックアップトラックを手に入れた。

タコマを選んだ理由は「日本で売っていない日本ブランドだから」。フォードやシボレーのピックアップではなく日本車というチョイス。日本車なのに左ハンドルで、ランクルのピックアップとも違う。「USDMがいいんですよ」。
USDMとはユナイテッド・ステイツ・ドメスティック・マーケットの頭文字をとったもの。直訳すればアメリカ国内市場。つまりアメリカで販売されている仕様の車に乗ることを意味し、カスタムカーのトレンドのひとつになっている。

USDMが流行りだしたのは最近のことだが、実は名取さんは学生時代の頃から、つまりUSDMなんて言葉がなかった頃からこうした仕様にこだわっていた。先述の通り、ピックアップトラックには縁がなかったが、代わりに並行輸入の日産・クエストやスバル・アウトバック(※名取さんが購入した初代の日産・クエストは、当時北米を中心に売られていたミニバン。もちろん左ハンドル。スバル・アウトバックも北米仕様で同じく左ハンドル。当時日本ではまだアウトバックではなく「レガシィ グランドワゴン」として販売されていた)に乗っていた。
アウトバックに至っては「一度事故で廃車になったんですが、同じ赤メタリック×グレーのツートーン仕様にもう1回どうしても乗りたくて、やっとの思いで見つけて買いました」というほどだ。
 

いつの間にか「こだわり」を見失っていた

こうした趣味の車をたびたび所有する一方で、家族ができてからは一般的な乗用車も持つようになった。最初に買ったのはメルセデス・ベンツのEクラスセダン、以降EクラスのワゴンやSクラス、ポルシェ・911(993型)など数多く乗り継いだあとに、現在はメルセデス・ベンツのGクラスを所有している。いずれも運転するのは主に名取さんの家族。
仕事が車関係ということもあり、自分の車以外にもたくさんの車に乗ったり、ヨーロッパの高級車やスーパースポーツカーを扱ったり、それらのオーナーとも数え切れないくらい車談義をするなど、車漬けの毎日を送っている。それだけ車に精通している人が、なぜ今タコマだったのか?

「仕事の関係で、いわゆる高級車やスーパースポーツカーと呼ばれる類の車に乗る人ともお話しする機会があるのですが、次第に『どうも自分は少し違うな』と感じ始めたんです。確かに僕も以前ポルシェなどにも乗ってましたが、今思えばちょっと見栄を張っていたかなと」。
「特に日本でも有数のコレクターの方に何度かお会いしましたが、そうした方々の博識や熱意を目の当たりにすると、満足する次元が違い過ぎて恥ずかしくなったんです」。だからといって、では彼らと同じようになりたいかというと、名取さんは思わなかったという。「僕のこだわりとは違うと思ったんです」。



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