俺たちがフランス製品に求めるのは、まずは美しさ。そして実用性、そして他国にはまねできないエスプリ。それらを満たしているからエルメス、ルイ・ヴィトン、ラコステ、ジェイエムウエストンが好きなのだ。じゃあ、プジョーはどうかというと、しばらくご無沙汰だったように思う。かつて憧れた205や406、306カブリオレはなくなって久しい。
でも、あのときの熱狂再び……。今回フォーカスを当てる508と508 SWは、新たなフレンチ名品と呼ばずにはいられない。デザインと機能の融合、すなわちコルビュジエ先生曰くエスプリがあるのだから。車はドイツ車が最高!はたまた、国産のハイブリッドで十分と思っている人にこそ乗ってもらいたいのがこの2台なのだ。
その美しさと乗り心地にハッとさせられるから。年を重ねると服も食べ物も行く店を変えなくなる“食わず嫌い”な頑固者になりがちだが、その殻を脱ぎ捨て、ぜひ乗ってみて! 惚れちゃうからさ。
PEUGEOT 508 プジョー 508
ボディサイズ:全長4750×全幅1860×全高1420mm
燃費:14.7〜18.3km/L
総排気量:1598〜1997cc 乗車定員:5名
価格:424万7000円〜
2019年3月に日本国内発売された508は、プジョーの最上級サルーンである。「大胆不敵なデザインでサルーンの概念のすべてを変える」というのがデビュー時のキャッチコピー。その言葉どおり、サッシュレスドアにテールゲートを備えた4ドアクーペ風デザインがインパクト絶大。モデルラインナップは、2Lディーゼルを積んだGT BlueHDi、1.6LガソリンターボのGTラインと、同エンジンで装備を簡素化したAllureの3つを展開。
車1912
シートは65万円のオプションでサンルーフやパークアシストなどとともに付いてくるナッパレザー。適度なホールド感が運転の披露を和らげる。
ちなみに最上級のGTラインにエクストラを載せなければアルカンターラのシートが付く。2.0Lのディーゼルエンジンは、さすがディーゼル大国のフランス産であり、思いのほか静か。それ以上に力強さの印象が勝る。
荷室は、487Lほど。普通のセダンよりも背の高いものも入れやすい。リアのLEDは縦に左右12本のラインが連なる。これはブランドのアイコンでもある、ライオンの爪跡を模したという。
コックピットはどのクルマにも似ていない。ステアリングは超小ぶりで、天地が押しつぶされたような形状。そのステアリングをかなり下のほうに位置させ、その上から液晶のメーターを見るように座らせる。つまり普通は胸の前なのが、お腹の前にステアリングがある感覚。これが慣れると楽チンかつ走らせやすい。まるでママチャリからスポーツサイクルに乗り換えたかのような感じだ。
セダンじゃなくて、ファストバック。美しいヒップラインに惚れた!
大人になるとたいていのことに慣れてしまって、毎日が同じことの繰り返しになっていることに気が付くときがある。だいたいのパターンが読めるから、ルーティンで流してしまう日々。そんな生活を打破するには、見るに美しく、乗るとうっとりしてしまうプジョーの508と508 SWが効く。
この2台、カテゴリー的にはセダンとステーションワゴンという王道ではあるが、そのスタイルは格別に美しく、洗練されている。それもそのはず、プジョーの最上位モデルであり、生半可なものでは世界最古の量産自動車メーカーとして、また輝かしきWRC世界ラリー選手権やル・マン24時間耐久レースの活躍など、その沽券に関わるというもの。
とはいえ、 世はSUVが花盛り。格好良くて、実用的で……。でも、ただ流行りに乗ってSUVを選ぶなら、一度立ち止まってこの508と508 SWに触れていただきたい。この車はあなたの日々に、間違いなく潤いを与えてくれるから。
まずは508のセダン、いやこの車はファストバックと呼ぶのが相応しい。この508の白眉は、顔のインパクトもさることながら、リアの形状にある。つまり、ファストバックと呼ばれるルーフからリアにかけてなだらかに傾斜するデザイン。通常、このファストバックスタイルはクーペに採用されるデザインで、特に空力特性や美しさを求める意匠だ。が、プジョーはあえてセダンでそれをやった。
この形状により後席のヘッドクリアランスに多少の犠牲は出たのだが、それ以上にこれほどまでに美しいセダンを造ることに社運を懸けたのだ。なかなか社内会議で通らないですよ、後席を犠牲にするセダンなんて。エスプリ利きまくり。とはいえ、身長170cm以下の方であれば、さほど狭さを感じない。中学生のお姉ちゃんと、小学生の弟に文句を言われることなく、この美しく格好いいセダンに乗れるなんて、最高ですよ。あと、フォーマル感があるのはやっぱりセダンならでは。
プジョーは長らくフェラーリなどをデザインしているピニンファリーナがデザインを担ってきた。我々世代では205、306カブリオレ、406クーペなどが記憶に残っているかと。今回の508はピニンではないが、プジョー伝統のデザインテイストを感じさせる。近頃、実用車としてのイメージが強く、あまり元気のなかったプジョーにまた美しい、格好いい、と素直に思える車が出たのはうれしい限りだ!
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