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2019.10.05

あそぶ

走り続ける男・大迫傑の「親は一歩引き、決断は子供にさせる」子育て論

先日行われた東京オリンピックの日本代表選考レースMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)。2位までが日本代表内定となるこのレースで、中村匠吾選手と服部勇馬選手と競り合いながら、3位でゴールした大迫傑選手に釘付けになった人も多いのではないか。
大迫傑が語る子育て論
ナイキ・オレゴン・プロジェクトにアジア人として唯一所属し、現在はマラソンの日本記録保持者である彼が今年の8月、走ることで得た経験や思考法を綴った書籍『走って、悩んで、見つけたこと』を出版。
そこには、子供の頃の思い出から、学生時代の話、現在の拠点であるアメリカ・オレゴンでの生活など、今まで語られることのなかったエピソードが綴られている。
そこで今回は、プライベートでは2人の女児の父親でもある彼に、子供時代の話から、自身の子育てについて語ってもらった。
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両親から受けた「一歩引いて見守る」姿勢

大迫選手が本格的に陸上を始めたのは中学生のとき。それまでやっていた野球よりも走ることが楽しくなったのがきっかけだった。
「近所で行われるマラソン大会などに出ているうちに走るのが楽しくなってしまったんです。ただ、僕の中学校には陸上部がありませんでした」。
普通ならそこで諦めてしまいそうだが、大迫選手は他校の練習に参加したり、クラブチームに入るなど、ものすごい勢いで競技へとのめり込んでいった。
「両親が学校に、試合へ出られるよう交渉をしてくれたり、クラブチームも一緒に探してくれて片道1時間くらいかかる練習場所まで送り迎えをしてくれました」。
中学2年生になり、母校に陸上部が発足。それからは陸上漬けの毎日だった。練習を休むことを嫌い、家族で出かけても練習時間に間に合うように一人で先に帰宅するほど、走ることに夢中だった。

「両親は自分の好きなことをやったらいいというスタンスで、特に競技について何かを言われたことはありません。だからと言って関心がないわけじゃないと思うんです。結果も気になっただろうし、今でも試合は見にきてくれますから」。
スポーツに限らず、習い事でも、勉強でも、ついあれこれとアドバイスをしたくなるのが親心。けれども、大迫家の場合は、一歩引いて見守るというのが両親のスタイルだった。
「言いたくなる気持ちはわかりますが、それって子供にとってはプレッシャーだったりするんです。子供のタイムが伸びないなどの相談をされる場合もありますが、そういうときって子供自身も悩んでいるはずです。
子供が自分から相談をしてきたのなら別ですが、親はどんな成績でも関係ないくらいの気持ちで見守ってあげてほしい。僕は親にプレッシャーをかけられることがなかったから、走ることを楽しめたし、だからこそ今も走る楽しさや喜びを感じることができるんだと思っています」。
それでもあえて両親から受けたアドバイスを挙げるとしたら、それは「自分のことは自分で決めなさい」ということだろう。
複数の高校から推薦の話をもらったときにも、自ら選択し、各学校へ連絡をしたという著書に書かれているエピソードは強烈だ。だが、「子供の頃から自分で選んできたことが、自分を強くしてきた」と大迫選手は語る。

「ちゃんと自分で考えて、自分で決めて、自分で責任を取ることはすごく大事だと思っています。今までいろいろな選手を見てきましたが、親が何でも決めている選手って、結果的に周りのせいにするんですよね。
学生時代、常に僕よりも速い選手はいました。それが今、なぜここまで差がついたかというと、ひとつには、僕は自分で決断をしてきたからです。
昔、僕と同じくらいの実力の選手がいたのですが、その選手は何かを決断するときに必ず誰かに判断を仰いでいたんですね。で、失敗をすると人のせいにする。『あの人が言ったから、やったのに』って。そうやって周りのせいにすると、本人は何も進歩しません。
これが自分で決めたことなら、誰のせいにもできないし、たとえ失敗しても、じゃあ次に同じ失敗をしないためにはどうしたらいいのかと考えるようになる。そういう経験が積み重なって大きな差につながったと僕は思っています。そのためにはどうしたらいいかというと、やっぱり親は一歩引いて、子供に任せるべきなんです」。
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