OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. ライフ
  3. 債務整理3000件の弁護士に聞く、「賢く借金できるのはどんな人?」

2019.09.27

ライフ

債務整理3000件の弁護士に聞く、「賢く借金できるのはどんな人?」

連載「賢い借金」
ローンや借金というと、ネガティブに捉えがち。でもちょっと待った! 借金とは、いわば“未来のお金を先に使うこと”。使い方次第で利用価値は大いにある。家やクルマといった大きな買い物も増える年代。一度フラットに借金を考え直してみよう。
住宅やクルマのローンなど、30代後半になれば「借金」を利用したいシーンも増えてくる。筆者もそのひとりだけど、意外とその知識って少ないもの。まずは借金のキホンを手取り足取り懇切丁寧に教えてもらいたいのだけど、誰に聞くべきか……。
いろんな専門家がいるものの、やっぱ信頼できるのは弁護士でしょ! 借金で最後に頼るのも弁護士だし(笑)。なんて考えていたら、世の中には債務整理3000件の相談実績を持つ、同年代の“敏腕”の弁護士がいるらしい……。そこで、その“敏腕”こと鈴木淳也弁護士を訪ねてみた!
鈴木さん鈴木淳也/大手法律事務所で活躍した後、2018年4月に鈴木淳也総合法律事務所を設立。借金の債務整理から企業法務など幅広く対応。気象予報士や防災士の資格も保有するマルチ弁護士。
 

借金で失敗する人の特徴って?

--3000件ってすごいですね! そんなに借金で失敗した話を聞いていたらウンザリしませんか?
いきなり切り込みますね(笑)。でも、この仕事をしていると「浪費」はしたくないと強く思いましたよ。
鈴木淳也(弁護士)
--浪費は僕だってしたくないですよ。先生もともと浪費グセが?
違いますよ!(笑) では伺いますが、お金を使うのは「消費」ですよね。消費と浪費の違いって、どこにあると思います?
--問い詰めるタイプの弁護士さんですね。うーん、金額を使いすぎるのが浪費?
それも重要です。ただ、まずは「目的」ではないでしょうか。高い買い物もきちんと目的があるなら消費。深く考えず使うのが浪費。そして浪費の場合、計画性が低く収入に見合わない支出をしがちです。そんな人は「無理な借金」に陥りやすい。
--無理な借金?
はい。つまり、収入と支出のバランスが崩れた借金です。
--どういうことですか?
例えば、借金をどうにかしたいと依頼に来る人のほとんどは、自分の借金額を正確にわかっていないんです。意外と思うかもしれませんが、これが無理な借金の最重要ポイントかもしれません。
--なんで借金額がわからないんですか?
では質問ですが、ご自身の毎月の家計、つまり「支出」と「収入」を明確に把握していますか?
--また質問形式ですか……。大体ならわかりますが。
大体ですよね。特に支出は把握していない方が多い。無理な借金をする人のパターンは、住宅ローンなどで生活が圧迫され、それをキャッシングで補填する。自転車操業のように返しつつ借りる状況になるんです。
--それで借金額がわからなくなる?
はい。収入と支出を把握できていないので、トータルで毎月どれだけのお金を返済しているのかわからなくなる。借金が増えているのに、やりくりできているように錯覚する。実際、債務整理に訪れる人に借入残高を聞くと、ほとんど正確に把握していません。
--そうなんですか……。
住宅ローンで苦しみ、キャッシングで生活費を捻出する人は本当に多いです。きちんとしたキャリアの人でも、家計を把握していなくて借金で失敗するケースはたくさんありますよ。
2/2

借金=悪ではない。金利に気を配ることが大事

鈴木淳也(弁護士)
--やっぱり3000件もやっていると、借金のネガティブな面をたくさん見てますよね。
でも決して「借金=怖いもの」ではないですよ。
--3000件もやっているのに?
はい。目的があり、家計の把握ができていれば。家やクルマ、みんな借金で買っているじゃないですか。「金利」と「柔軟性」さえ意識すれば怖がるものではありません。
--どういうことですか?
まず「金利」ですが、借りるときは必ず金利を含めた総額を計算すべきです。例えば消費者金融なら、100万円借りると15%まで金利を設定できます。年間15万円ですね。
--僕もそのくらいは計算できます。
もし月2万円ずつ返済したら、年間で24万円。利息を考えると、年間でたった9万円しか返済していないことになる。全部返すまでに相当の利息を払うことになります。
--それはちょっとまずいですね。
でも実際にそういうケースはあるんですよ。計画性が甘い。住宅ローンも含め、金利まで含めた総額を見て、返済プランを立てること。当たり前ですが、それが“賢い借金”の仕方ですよ。
--ちなみに、いくらまで借りられるんでしょうか?
キャッシングなら、総量規制で控除前年収の3分の1。つまり、600万円の収入があったら、200万円は可能です。でも、住宅や自動車は、総量規制は適用されません。
--どうしてですか?
担保がありますから。返済が厳しくても、住宅や車を売れるので高い金額を貸せるんです。
 

返せなくても「見栄」を張ってはいけない

鈴木淳也(弁護士)
--担保といっても、家を売るのは…。世間に示しがつきませんよ!
出ましたね、その考えこそ失敗の典型です。
--いやいや、誰だってそうでしょう。恥ずかしいじゃないですか。
「恥ずかしい」って何ですか? あなたが大切なのは世間の目ですか? 家族より世間が大切ですか? 見栄を気にして家族を苦しませる、借金の苦しみを味わわせても良いんですか?
--でも、ローンを返せず家を手放すのは……。
気持ちはわかります。でも、そのくらいの「柔軟性」が借金には必要なんです。さっき「柔軟性」を挙げたのはそういう意味ですよ。
--なんか手玉に取られている気がします。
それはあなたの考えが「よくいる人」の典型だからです。借金するときは、「もし返せなかったらどうするか」を考えておく。そして、いざそのときに柔軟に決断できるかが重要なんです。
--返せなかったらどうするか……。
「返せなくなったら終わり」と思いがちですけど、私から言わせれば屁でもないですよ。十分にやり直せます。
--そうなんですか?
債務整理も、実は社会的な信用をそんなに落とすものじゃない。最初から返すつもりがないのは絶対ダメですが、いざ返せなくなっても、あまり悲観的になってはいけません。
--返済できなくなったら人生ゲームオーバーだと思っていました。
返済不可は、絶望的な状況ではありません。むしろ、返済不可の際の知識を事前に学ぶのが大切。それも「賢い借金」に必要ですよ。もしよければ、次回説明しましょう。
--ぜひよろしくお願いします!
 
取材・文=有井太郎

SHARE