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2019.09.01

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クレイジージャーニー・丸山ゴンザレスが、一般社会のルールが通じない現場で動じないワケ?

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。
丸山ゴンザレス「僕は旅先で得た情報を多く持っているだけなんです」
1977年、宮城県生まれ。ジャーナリスト、編集者。國學院大学院の修士課程修了後、アルバイト生活を経て、出版社に就職。のちに独立。著書に『アジア「罰当たり」旅行』など多数。人気番組「クレイジージャーニー」(TBS系)に危険地帯ジャーナリストとして出演中。
殺し屋へのインタビューや、犯罪組織も根城にするスラムの取材など危険な仕事をしてきた。新刊『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』にも「命に値段はつけられる」といった類いの物騒な言葉が並ぶ。

テレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系)では勇猛果敢に突き進む姿が見どころだ。視聴者は好奇心がくすぐられ目を離せなくなるのだが、それは丸山も同じ。彼を突き動かす原動力は知らない光景を「見てやろう」という気持ちなのである。

「やっていることは昔から同じなんです。高校時代に初めてひとり旅をしたときから現在まで、知らない世界を見たいから旅に出る。今はそれが仕事になっている感じですね」。

とはいえ、取材対象が独特すぎる。アンダーグラウンドの世界に詳しくなったきっかけは、20代でしていた新宿界隈での“通常とは違う” アルバイト。以降、26歳で初めて就職した出版社時代やフリー転向後も、裏社会や潜入取材を多く手掛けた。それにしても、一般社会のルールが通用しない現場で、なぜ動じないのか。
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「プロの編集者や情報発信者として僕は後発です。既に活躍している同業の人に追いつき追い越すには圧倒的な物量をこなすしかない。そう考え、人が月に2本のインタビューをするなら僕は10本やる、年に30冊の単行本を企画する、という具合に誰よりも多くの量を課していた時期がありました。そうして多くの人と接するなかで、インタビューはケースバイケースだな、必勝法なんてないんだな、と思ったんです」。

取材対象者のいる場に入ったなら、まず場の空気を感じ取る。質問を投げ、返ってきた答えで相手の状態を掴む。現場で培った対人センサーは常人のクオリティをはるかに凌ぎ、場の変化にも柳のように対応する。
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また、あまりに旺盛な好奇心から、奔放な文体で知られる伝説のジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのような人物かと思っていた。そう話を振ると、「あぁ」と言葉をこぼし、しばし思考を巡らせた。

「確かに、見てやろうという気持ちは一緒かもしれません。ただ、おこがましいので僕は旅や取材に対して内省はしません。あまり自分も出さない。そういう意味でジャーナリストではないんですよね。事実、僕は自分を旅人だと思っています。旅先で得た情報をたくさん持っている情報屋ということですね」。

好きな言葉は探検家・星野道夫による「さまざまな人と出会いながら、僕はいつも旅人だった」(※)。丸山はこれからも旅先で多くの出会いを経験し、ホームの日本へ戻ってくる。そして誰もが知らないような土産話で楽しませてくれるのだ。
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※引用:小林誠子『ラストシーン 夢を追いかけ散っていった冒険者たちの物語』(バジリコ、2007年)
『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』
『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』丸山ゴンザレス 著 
丸山ゴンザレス 著 光文社 740円
人が人を殺す理由は何なのか。世界中の危険地帯の取材を続けるなか、丸山ゴンザレスは日本人の常識とは相容れない考え方に出会ってきた。仕事だから作業のように人を殺す。金持ちからは奪っても良い。縄張りに入ったやつは排除する。教科書には決して載らない「危険思想」を自らの体を張って体系化した1冊。
PAK OK SUN(CUBE)=写真 小山内 隆=取材・文

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