旨い酒を知ることはもちろんだが、上手い酒の飲み方もそろそろ知っておくべき40代。シチュエーション別“スマートな酒のマナー”を、店と街の人たちに聞いてきた。
今回はオッサンの心のオアシス、スナック編。以前、
「看板娘連載」でもお世話になった荻窪の隠れた名スナック「ラフ」を再訪し、美人ママの美咲さんにスナックでのスマートな立ち居振る舞いについてうかがった。
オッサンの“オアシス”、スナックの魅力は客同士の距離感である!
——とうとうきました、スナック編。僕も生粋のスナックラバーで、よく行くんです。スナックはオッサンのオアシスですよ!そうなんですね(笑)。ただ、ウチのお店は20代前半の方もよくいらっしゃいますが。
——そ、そりゃそーですよね……オッサン改め、男のオアシスだ。日常の宿り木みたいな存在!立派なスナックラバーですね(笑)。とはいえ、やはりスナックにも最低限のマナーはありますよ。
——フリースタイルで何でもあり、ってワケにはいかないですよね。アットホームですけど、決して自分のおうちではないので。思うのは、
“親戚の家の雰囲気”に似ているのかな、ということ。例えば親戚の集まりで、よく知らない叔父さんや甥っ子たちが集まるじゃないですか。で、最初はちょっとよそよそしいんですけど、最終的には
一緒に盛り上がる。でも最低限の礼儀は忘れない、みたいな感じですね。
——それ、すごくよくわかります!あとは、お店に馴染むのであれば、やはり司令塔のママさんに嫌われるような振る舞いは避けたほうがいいかと。
——そのためにはどんなことに気をつければいいですか?ほかのお客さんとトラブルを起こされるのがいちばん困りますよね。常連さんは、カウンター越しにスタッフと話をするというよりも、
お客さん同士で話をするケースが多いですから。そこでトラブルを起こされると、お引き取り願うしかないかもしれませんね……。
グループでの身内ノリ、カッコ悪い。スナックでの正しい振る舞い方とは?
ーースナックは居酒屋と違って「客同士の席を離せばいい」ってワケにはいきませんもんね。やはり
スナックは“輪”で、一体感こそが魅力だと私は思うんです。満席だったら、ほかのお客さんにちょっとだけ詰めてもらうだとか。そこで「俺は客なのになんで席をずらなきゃいけないんだ!」と言われると、みなさんで楽しいお酒が飲めなくなりますから。
——やっぱりスナックはみんなで楽しむ場だと。そういう意味では、
グループで来て、グループだけで盛り上がるというのもよろしくないと思います。私としては、ひとりで来ているお客さんが端っこで肩身の狭い思いをする、というのは絶対に避けたいです。実際、何度注意しても、やっぱり大勢いると収まらないことも多いので……。
——二次会でカラオケボックスに来たかのようなノリは困りますね。「内輪だけで騒がない」というのはスナックの作法ですね。団体でいらっしゃるなら、事前に連絡をくれるか、貸し切りにするか、もしくはほかのお客さんと溶け込むように振る舞っていただければスマートだと思います。
スナックは小ぢんまりしたお店も少なくありませんから、
できれば3名様くらいまでで来ていただけると助かりますね。常連の方が入れなくなっちゃうとか、肩身の狭い思いをするのは避けたいですから。
スナック名物・カラオケ。初めての店でも絶対に外さない選曲は?
——カラオケといえばスナックに欠かせない大事な要素。美咲ママ的に「これはテッパン!」みたいな曲はあるんですか?まず、
BEGINさんの『三線の花』はオススメですね。「エンヤ〜サーサー!」と合いの手を入れれば盛り上がりますし、そのまましっとり聴くこともできます。老若男女を問わない人気曲でありながら、会話の邪魔にもなりません。誰もイヤな思いをしないテッパン曲ですね。
——ほうほう(メモメモ)! 僕も新たにスナックを開拓するときは歌ってみます!松山千春さんの『恋』も会話の邪魔にもならないと思いますよ。ほかには、
沢田研二さんの『勝手にしやがれ』は本当に幅広い世代にウケがいいので、覚えておいて損はないと思います。
——ほうほうほうほう(メモメモメモメモ)! ただ、ひとり舞台になることだけは避けてくださいね(笑)。
究極の疑問。ぶっちゃけ、ママを口説いていいのか?
——なかにはカラオケが苦手な人もいますよね? 歌わなくてもサムいヤツにならない?もちろん、歌が苦手な方も少なくありませんし、歌の無理強いはよくないですね。歌いたい人が歌って、それを聴きながらほかのお客さんは手拍子を挟み、歌が終わったら拍手をする……スナックでのスマートな振る舞いだと思います。
ーーでも、人見知りが激しいのか、うんともすんとも言わないお客さんもいませんか?たまにいらっしゃいますね。もちろんそれでもいいのですが、
できれば最低限の会話はしていただけるとうれしいです。なかには、お名前をうかがっても「いえ、私のことは(放っておいて)……」と、取り付く島もなく、何もお話できないお客さんもいらっしゃいました。せっかくのスナックですから、お名前や住んでいる場所などは答えてくださると会話も広がります。
ーーでは逆に、ほかの客に見向きも得ず、ママとばかり話をするのはありなんですか?う〜ん、ちょっと困ってしまいますね(笑)。うちの席数は8席ですが、スタッフは私を含めて2人なんです。なので、実質的に厳しいですね。
——ママやスタッフを口説こうとする客もいますよね? それって許される行為なんですか?どうでしょうね〜。実際にはあまりいませんが、
キャバクラで隣についた女の子を口説くみたいな行為はしない方がいいかもしれません。カウンターを挟んで、しかもそこまで広くないスペースですから、悪目立ちしちゃいます。ひょっとしたら隣のお客さんもママを気に入っているかもしれませんし、そうなると確執もできますよね。スマートじゃないかな、と思います。軽いノリで
「今度ご飯行こうよ」ぐらいなら許容範囲かもしれませんね。
——連絡先を交換するのはいかがでしょう?(ゴクリ)う〜ん……
お店の女の子と連絡先の交換をしたいときは、一度ママに尋ねたらいいと思います。最初からゴリ押しするより、
「ママ、スタッフの女の子と番号交換したいんだけど、いいかな?」という感じで。ちゃんとした方だなぁ、と好印象にも繋がります。私は連絡先の交換は拒否しません……というか、そもそも名刺に電話番号を書いているので。まぁ、ほとんどかかってきませんけどね(笑)。
男は去り際が大切。「このボトル、キープで」はカッコよく告げよう!
——スナックでの“スマートな飲み方”というのはありますか?皆さん、平均4〜5時間滞在されますけど、うちに来るお客さんで悪酔いする方はほとんどいなくて、
「ちょっと酔ったから今日は帰るね」と言ってサラッとお帰りになられます。
——おお、それはスマート!あとはボトルキープの仕方でしょうか。
恩着せがましく「ボトルを入れてやるよ」的な横柄な態度はスマートではありませんね。逆に、
帰り際になってから「それじゃ、新しいボトル入れてくよ」と言ってサラッと帰る。言外に「またくるよ」って意味も含まれていますし、とてもスマートだと思います。見ていてカッコイイですね。
——今度やります! ……と言いつつ、「ラフ」の空間にすっかり魅了され、最後に一曲歌って店をあとにした取材者だった。
[取材協力]「ラフ」住所:東京都杉並区上荻1-4-3 2F電話:090-6549-8390営業:20:00〜日曜定休菊地 亮=取材・文