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汚れた靴で乗れないような車は自分には向かない

高橋さんが車を持ったのは、約12年前のこと。それまでバイクで通勤していたが、長男が生まれたのを機に購入したという。本当は四駆が欲しかったが「スライドドアの車がいいと妻が言うので」あれこれ悩んでミニバンのクライスラー・ボイジャーに。

見た目は大事。だからボイジャーも、わざわざ本国アメリカだけで販売されていたデザインのものを探したという。

「ボイジャーは100万円ほどで走行距離2万kmの中古車。約10年落ちでしたがなかなか良い車でしたよ」と振り返る高橋さんだが、実はいざ妻が運転してみるとボイジャーは大きすぎ、結局妻専用に小さな車を追加で購入する羽目に。「だったら最初から別々でよかったじゃん……とは言えません 」。そしてボイジャーの3回目の車検の際にかなりの金額がかかることがわかり「よし! これで買い換える理由ができたと(笑)」。

実は口実ができる前から、次は何がいいかなと思案していたという。ジープ・ラングラーやチェロキーはボイジャーと同じクライスラーだし、せっかくなら別のメーカーの車に乗ってみたい。ディスカバリーは大人というか優等生すぎる感じがしたし、ランクルは乗ってる人が多いので人と被るかも……。

と、調べられるだけの四駆を調べて、次の相棒を探していたという。

「最終の候補としては、レンジローバーやメルセデスのGクラスも良かったんですが、ラグジュアリー過ぎて。やっぱり自分は『汚れた靴で乗るのがはばかられるような車はイヤだな』と思ったんです」。

車も服と同じ、ディフェンダーは心から“身につけたい”と思えた

そんなときにネットを調べていて、ディフェンダーが当時まだ新車で手に入ることを知った。「イメージはまさにキング・オブ・四駆。ヤンチャな泥まみれが似合いそう」。

さらにエリザベス女王が運転している動画も見つけたという。「アメ車が泥だらけって当たり前ですけど、ディフェンダーには優しさや気品も感じました」。そのギャップにヤラレて即決したという。

「デザインがずっと変わらないという潔さもいい」と高橋さん。「昔のデザインだけれど、今の時代にも合うと思います。そういうオーセンティックなものって格好いいし、汚れやサビも味わいになります。服は古着が好きなんですが、それと同じ感覚ですかね」。

タイヤの汚れや鉄製ホイールのちょっとしたサビも味わいに。


高橋さんにとって、愛車選びは服選びと同じ。「本当に格好いい、好き、と思えるものを身につけたい」。他人に勧められて選ぶのではなく、身につけたいものを見つけるために自分で徹底的に探す。

相性のいい車は、オーナーに似てくる? 

家族がいるのにひとりでフェスに出かけたりと、まだまだ遊び盛りな高橋さん。もちろん家族との時間も大事にしている。年に4〜5回は一緒にキャンプへ出かけ、子供が小さいうちは近場にしていたが、「娘は今年5歳。ようやく体つきがしっかりしてきたから」と今季からのキャンプは今までより少し遠い、長野県の上高地まで足をのばすという。

シフトレバーに巻かれた、これまでに行ったフェスのストラップ。


「家族で遊びに行くのももちろん楽しい、でも、子供たちのほうから『キャンプ行きたい!』と言われたことはまだないですが(笑)」。

来年は息子さんが中学に入るから、一緒にフェスに行ったらどうです? と尋ねると「まあ、本人が僕ぐらい音楽を好きになったら、一緒に行ってもいいかな(笑)」。武骨でヤンチャ。でも優しい。高橋さんのキャラクターがディフェンダーと重なって見えた。



約5年で走行距離は6万8000km。これまで大した故障はなかったが、昨年の9月にクーラント(エンジンを冷やす機関)に原因不明の故障が起きた。ついでに飛び石による窓の小さなヒビやウインカーの不具合などの修理も重なったという。

そのときはさすがに買い替えを考えました? と聞くと「全然! 完全に壊れるまでは、一生乗るつもりです」と笑う。

本物の軽トラは、世界でも類を見ないほど壊れにくくロングライフで、多用途な車だという。高橋さんにとってディフェンダーは、家族も遊びも荷物も全部をガサッと詰め込んで、どこへでもずっと一緒に走り続けられる「軽トラ」なのだ。


鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文



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