さて、この「タバタバー」のオーナーは櫻井寛己さん(29歳)。田端生まれの田端育ち、田端から出たことがない生粋の田端っ子だ。
彼はこの近くのローソンの店長という顔も持つ。父親の代から営む、いわゆる「オーナー店」である。
櫻井さんは田端愛が高じて、田端のトピックだけを扱う「
TABATIME」というウェブメディアも立ち上げた。
「田端の魅力はたくさんあるのに、住んでいる人でさえ知らないことが多い。ウチは曽祖父の代から田端に住んでいるため、街の中にいろんな繋がりがあります。だから、田端の情報が集まる拠点を作ろうと思ってこの店を始めました」
現在は、幻冬社×CAMPFIREが立ち上げたクラウドファンディングを利用した出版プラットフォームで田端本の出版に向けて動いている。
こうした取り組みには朝子さんも積極的に関わっている。
「飲み屋にひとりで入れる人って、その街を楽しむスキルを持っていると思います。私も前からそうだったら人生が変わっていたかも」
そんな朝子さんの子供時代の話が面白かった。
「なぜかレジが大好きで、テレビのリモコンをピッと押すと机の引き出しから紙のお金が出てくるという遊びを妹とやっていました。今考えると妹は嫌がってましたね」
さらに、「家族新聞」も発行していたのでなかなか忙しい。
「要するに、『妹がテーブルの角に頭をぶつけて泣きました』とか『飼っている猫に愛人がいたことが発覚』とかっていう家族内のトピックをまとめて家族に配布していたんです」
猫は放し飼いにしていたため、毎年のように軒下で子猫が生まれる。その都度、お母さんが新聞で里親を募集するそうだ。
ここで若い女性が入店。
「朝子ちゃんの大ファンなんです。最初、ひとりで入るのは不安でしたが、気を使って優しく話してくれたのがうれしくて」
カウンターの紳士からは「朝子さんが得意な玉子焼きをもらおうかな」とオーダー。
なお、この日は統一地方選挙投票日の3日前。選挙カーがひっきりなしに通りかかる。それを見ながら紳士が言った。
「候補者のことがよくわからないから、僕は毎回、ポスターを見て一番きれいな人に投票するんですよ。こないだは、あとで男性だとわかってびっくりしたなあ」
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