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2019.05.01

ファッション

メゾン マルジェラの4本のステッチ。匿名的で個性的な服が大人に与える満足感

ラグジュアリーブランドのアイコンは特別だ。長い歴史に裏打ちされた誇りや矜持が覗き、普遍的な愉悦をもたらす唯一無二の存在。そこに隠されたストーリーを紐解く。今回はメゾン マルジェラの“4本の白いステッチ”について。
2014年10月から、クリエイティブ・ディクレターにジョン・ガリアーノが就任。以降、新たな概念を取り込みながらメゾン マルジェラは進化を遂げてきた。とはいえ、ブランドの本質は創業時から変わらない。
洋服の本質を静かに語りかけるメゾン マルジェラの4ステッチ
アルチザンの技と伝統的なワードローブを尊重し、既存のルールにとらわれることなく、解体と再構築をもとに生み出すクリエイション。その先に生み出された服やアクセサリーを見れば誰もがそれを実感するだろう。
そして、白い糸で縫い付けられた匿名性を示す4本のステッチが、その哲学を端的に示している。
 

匿名的で個性的。シンプルなニットが持つ力

ブランドの定番で知られるエルボーパッチのニットウェア/メゾン マルジェラ
ジョン・ガリアーノが提起するハウステクニック“デコルティケ(服の核となる部分だけを残してほかを剥ぎ取る技)”で表現した定番のエルボーパッチ付きニット。パッチ部分のニットをくり抜き、ライニングのレザーが見えるように仕上げられている。カーディガン7万円、ニット5万9000円/ともにメゾン マルジェラ(メゾン マルジェラ トウキョウ 03-5725-2414)
このシンプルに仮留めしただけのタグは当初、あとから取り外すことを視野に入れて付けられた。それは、すべての創造の中心はプロダクトにあり、デザイナーの名前やブランドが主役ではないことのメッセージでもある。
しかし、そんな4本のステッチは今、メゾンのクリエイティブや哲学に賛同する姿勢の現れとして、着る人に受け入れられている。4本のステッチがあることで得られる喜び、ファッションの楽しみを、ファンは享受しているのだ。
 

「ステレオタイプ」という言葉に込めたウィット

コットンジャージー仕立てのTシャツ/メゾン マルジェラ
コットンジャージー仕立てのTシャツは、優しい着心地もまた魅力である。2万5000円/メゾン マルジェラ(メゾン マルジェラ トウキョウ 03-5725-2414)
メゾン マルジェラは2017SSシーズンから“型にはまった”“紋切り型”というような意味の「ステレオタイプ」という単語を用いたカプセルコレクションをスタート。一般的にスタンダードとされるワードローブをメゾンの視点で再定義したコレクションだ。
とはいえ、どれも“型にはまって”いるわけはなく、そんなメゾンの手法に我々は再び魅せられる。胸に堂々と「STEREOTYPE」と記したクルーネックのTシャツ、色で遊んだスタンダードなデイパック。前面にはあの4本のステッチが。
鮮やかな色を纏ったナイロンバッグは、フロントにエンベロープポケットが付き、内側にはPC用のコンパートメントを配置。/メゾン マルジェラ
ヴィヴィッドなオレンジがまったく“ステレオタイプ”じゃないデイパック。H45×W36×D16cm 9万8000円/メゾン マルジェラ(メゾン マルジェラ トウキョウ 03-5725-2414)
こういうウィットに富んだクリエイションこそメゾン マルジェラの真骨頂。そのセンスを共有する証しが、4本の白いステッチなのだ。
 
【問い合わせ】
メゾン マルジェラ トウキョウ
03-5725-2414
高橋絵里奈=写真 松平浩市=スタイリング 菊地 亮=文


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