連載「レジ横コーヒーのおいしいヒミツ」
お目当てのドリンクをレジで注文、カウンターで受け取る。コーヒーショップのよくある光景。でもちょっと待った。せっかくなら、レジ横に鎮座している豆にも目を向けてみよう。そこにあるのは、各ショップが考えた“ベストなコーヒー豆”へのアプローチなのだから。
「レジ横コーヒーのおいしいヒミツ」を最初から読むハイカラなインテリアに囲まれて、趣深い一杯をたしなむ。大正ロマンをテーマにしたその喫茶店は「椿屋珈琲」。自慢のコーヒーマイスターを抱え、古き佳きサイフォン式のコーヒーを提供している老舗だ。今回は、そんな椿屋珈琲 銀座新館の店長・岩崎さんに、こだわりのレジ横ブレンドを教えてもらった。
立体感のある繊細な風味。社内大会で王者に輝いた「椿屋プレミアムブレンド」
最初に教えてもらったのは「椿屋プレミアムブレンド」。社員によるオリジナルブレンドの品評会を勝ち抜き、見事メニュー化にこぎつけた自信作だ。
「大会では私も審査員を務めていましたが、満場一致でグランプリに選ばれた豆です。その特徴は、さまざまな風味の織りなす立体感。甘くフルーティなエチオピアをベースに、コーヒーの王道をゆく苦味やコク、さらにはケニアとタンザニアのキレのある酸味を複雑にブレンドしています。華やかさと深みを兼ね備えた、斬新な一杯です」。
決して単調にならない、幾重にも張り巡らされた味わい。いわば、面ではなく層で楽しむコーヒーなのだ。なかでもフルーツ由来のすっきりとした酸味は、酸味というひと言では言い表せない。フレッシュさすら感じられる。
「日本では梅もお酢も柑橘類も、すべて『酸味』というひと言で括られています。ですが、ヨーロッパでは酸味にも種類があり、発酵した酸味は『サワー』、フルーツの酸味は『アシディティ』と区別される。その言葉を借りるなら、椿屋プレミアムブレンドはアシディティを感じるコーヒーです。酸化したコーヒーの印象で酸味を苦手としている人も、ぜひお試しください」。
海外にはない旨味という概念が「UMAMI」として広まったように、日本にも新たな味覚表現が海をわたって伝わりつつある。こうした知識を増やしてみるのも、コーヒーの違った一面に気づくきっかけになるかもしれない。
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