看板娘という名の愉悦 Vol.49
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
ちょうど1年ほど前。銀座のキャバレー「白いバラ」が90年近い歴史に幕を下ろした。
キャッチフレーズは「あなたの郷里の娘を呼んでやって下さい」。各都道府県出身のホステスが方言で話してくれるのがウリの店だった。
日本酒にも同様の魅力がある。やはり、故郷で造られた酒を飲む行為は感慨深い。
東口を出て徒歩5分。目指す「夢酒 新宿本店」が見えてきた。
階段を上がると大量のラベルがお出迎え。
北は北海道から南は沖縄まで、全国47都道府県の日本酒を酒屋育ちのオーナーが自らセレクトしているそうだ。グラスは60ml、120ml、180mlの3種類。全国の日本酒が340円から飲み比べできる。
「うちはレアな銘柄もたくさん置いてあって、詳しい人が見ると驚かれることも多いですね」と前置きして彼女が持ってきたのは、幻の日本酒と呼ばれる山形県の「十四代 七垂二十貫」
値段が怖いけど、いただきましょうか。
「でも、これは空なんです。あまりにもレアだから瓶だけ保存しています」
というわけで、気を取り直して看板娘に選んでもらった。
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