誰しも思い入れのあるスニーカーの1足や2足はあるもの。復刻ばやりの昨今、再び日の目を見たモデルも少なくないとはいえ、たいていはセピア色の想い出の中だ。いまだスポットライトを浴びていないそんな1足を勝手に復刻リクエスト!
「現在の所有足数は2000を超えていると思います。もちろん商品とは別の純然たる私物として。それだけあるコレクションのなかでもずっと復刻を希望している一足ですね」。
スニーカー部屋と称して、住まいとは別に10畳のワンルームを借りている吉祥寺のスニーカーショップ「SKIT(スキット)」のオーナー・鎌本勝茂さん。
これまで
NIKE(ナイキ)を連打してきた鎌本さんが4足目の復刻希望としてADIDAS(アディダス)を俎上に載せた。エントリーしたのは、知る人ぞ知るランニングシューズ「ADIOS(アディオス)」だ。
出合いは中学生の頃。
「陸上部の先輩が履いていたんです。当時はモデル名も知りませんでしたが、妙に心に引っかかって。バッシュしか興味のなかった当時の僕には珍しいことです」。
そして運命の再会を果たしたのが、東京に出てきて間もない1998年のことだった。
「高円寺の古着屋にデッドストックがあったんです。間違いない、あの先輩が履いていたスニーカーだ! わかったとたん矢も盾もたまらず財布の紐を緩めてしまいました(笑)」。
もともとランニングカテゴリーでリリースされていたもので、メッシュパーツやヴィヴィッドカラーの配色が妙に今っぽい。ソールは衝撃吸収テクノロジーのadiPRENE(アディプリーン)搭載で、最近の“厚底ランニングシューズ”ブームを先取ったような雰囲気だ。アイコンの“3本線”を使ったデザインも大胆。
「配色も今の時代にフィットしてますし、なるべくオリジナルのディテールそのままで復刻してもらいたい! 好きな人はいるはずだし、数年後には必ず評価されるはずですから」。
というのも、10年ほど前からドイツやフランスを中心としたスニーカーシーンでは、こうしたランニング系がじわじわキテるのだとか。
「そういうトレンドを先取りするっていうのも、格好いいと思うんですよね」。
PROFILE
鎌本勝茂●1978年青森県生まれ。高校卒業と同時に上京、いくつかの店でスニーカー販売を手掛け、2001年、吉祥寺に一号店をオープン。そのたしかな見識眼で多くのスニーカーファンを虜に。映画『スニーカーヘッズ』にも出演した。現在は大阪、仙台、福岡にも出店。
竹川圭=取材・文