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OCEANS Fashion X Talk
しかし福本さんにとってその毎回の作業よりも大変だったのは、「妻を説得すること」だったと言う。
「大反対されました。というのも実は、2人目の子供が生まれたのを機に、古いジムニーから最新のミニバンへ乗り換えて、まだ1年しか経っていなかったんですよ」。
子供たちの教育費がこれからかかるというのに、なぜ古くて燃費の悪い車にして余計な出費を増やすのか、乗り心地も悪くなるし、せっかく買った車を1年しか乗らないなんてもったいない……etc. 妻の指摘は「すべてもっともです」と福本さんも認めている。
「ミニバンはとても快適でした。燃費も良かったし乗り心地も良く、使い勝手もいいし、なんのストレスもなかったんですよね。けれど、ストレスがなさすぎて、乗っていて全然気分がアガらなかった」。
気分のアガらない車にこのまま乗り続けるのか? そんな自問自答をしていたところに、昔からずっと欲しかった「ランクル60」が見つかってしまった。
そして上記の通り、妻の大反対。「結婚して初めて家族会議を設けました(笑)」。
憧れ続けていた白ボディ×ブラウン内装であること、好みの後期型の角目4灯であること、希少なハイルーフ仕様であること、自分の生まれた年と同じ年式であること、これだけ条件がそろった中古車はもう2度と出てこないこと……福本さんは人生最大のプレゼンを行った。
が、そうした福本さんのこだわりにほとんど耳を貸さず、妻はひと言「で、それはずっと乗り続けるの?」と聞いたそうだ。
もちろん「一生乗ります!」と即答。さらに「お金ができたら、妻専用の軽自動車も買います」と付け加えたという。
軽自動車の約束が功を奏したのかは定かではないが、こうして福本さんは今目の前で「“自分がこの車を動かしてる”っていう操作感がたまらない」と目を輝かせながら我々に説明している。
福本さんがここまでランクル60にこだわった理由は、趣味のアウトドア。昔から好きだったサーフィンに加え、キャンプや釣りにもハマり始めたのは、社会人になってから。「先輩たちに連れられてキャンプや釣りに行っているうちに、こういうライフスタイルってステキだなと気づいたんです」。
テントを張って焚き火の周りをみんなで囲み、お酒を飲みながら語り合う。焚き火がほんのりと照らすのは、自分たちと、テントと、ここまで乗せてきてくれたみんなの愛車たち。
「古いランクルもヴァナゴンも、クラシックレンジもディフェンダーも。すごくサマになると言うか、見た目も機能もアウトドアにはまりますよね」。
中でもランクル60は、福本さんにとって「ザ・アウトドアのイメージそのもの」だった。「ただ、社会人になってすぐは若くてお金もなかったから、中古のジムニーにしたんです。それも相当気に入っていたけれど、やっぱりずっとランクル60が一番だと思っていました」。
実は取材時は、ランクル60が納車されてまだ1カ月ほど。それでも既に千葉の山奥にある野池に、ハンドメイドの木製ルアーをもって釣りに出かけたそうだ。「釣りは本当に投げているだけで面白いです。そのときはなかなか釣れなかったですが、ランクルなら行き帰りも楽しいですしね」。
さらに友人家族とのキャンプも計画中。「キャンプにも前からよく仲間と行っていました。昼間は子供たちを遊ばせるだけ遊ばせて、疲れさせ、子供がぐっすり寝たあとで大人たちだけでお酒を飲んでという第2幕が始まって」。
そのとき、焚きの灯りにほんのり写し出される白いランクル60は、きっと福本さんの気分をもっとアゲてくれるだろう。
愛車は福本さんと同い年となる’88年式。シフトレバーを操作する度にガチャガチャと音がする、高速を走るとうるさくて後部座席と会話ができない。
乗り心地はお世辞にも良いとは言えない……でも「自分でこの車を操作している! という感じがすごくします。それが自分にとって“車に乗る楽しさ”というか」と、子供のような笑顔で話す。
ランクル60のファンの中では丸目ライトの前期型が人気だ。けれど福本さんは「角目ライトのほうが格好良かったんですよね。天井の少し高いハイルーフ仕様で、白いボディにブラウン内装という組みあわせも、あまりないし」。というランクル60を語る言葉が止まらない。
変えたいのは前のオーナーが取り付けていたカーナビぐらいで「取り外して、ただの収納ボックスにしたい」とのこと。けれど、カスタマイズするのはせいぜいそれくらい。
逆に言えば、本当に探していた、夢に描いていた通りのランクル60が突然見つかって「しまった」のだ。
最初は大反対していた妻も、乗るうちに最近はだんだん好きになってきていると福本さん。
「妻に宣言した通り、一生乗り続けるつもりです。そして、もし将来子供が欲しいといったら、譲りたいと思ってます。こんなに楽しい車なら、“車に乗る楽しさ”をきっと感じてもらえると思うので」。どうやら本当に、これからの人生を一緒に走って行く1台に巡り会えたようだ。
こんなオトーチャンが運転するランクル60に揺られて育った子供たちは、きっと車好きになるに違いない。親にとっても子供にとっても価値あるものとして車を受け継ぐ。車も技術もどんどん進歩する今だからこそ、車とこんな付き合い方ができたら、幸せじゃないか。
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