勝ち目はあった。だが、楽じゃなかった
「エジプトめしコシャリ屋さん」は、このスペースには毎週金曜日に出店している。週1ってすごくちょうどいい。カレーとかローストチキンもいいけれど、「あ、今日来る日じゃん!」というインパクトにおいては、コシャリ屋さんに勝ることはないだろう。
「実際、出店しているのは2時間半ほどなんで、すごく楽だと思われがちなんですよね」。
須永さんは笑って言う。
平日の営業時間はランチタイムのみだが、コシャリ屋さんは、この場所以外にも日替わりであちこちに出動している。もちろん仕事はそれだけで済むわけではない。実際には、毎朝遅くとも6時ごろから仕込みをスタート。
「ごはん炊いてパスタ茹でて、チキンに下味つけて焼いてソース作って。現場ではごはんとかパスタとかチキンをよそって提供するだけですので、仕込みは全部やってから現場に赴きます。それで仕込みは毎日3〜4時間はかかってますね」。
仕込みを終えたら、平日は朝9時30分には家を出て、11時ごろには現場に到着。場所によってはその場で食べられるようにテーブルや椅子を用意する場合もある。
「それは場所次第ですね。その場所のセッティングが終わったら、開店して売ります。その時間がおおよそ2時間半。ランチタイムが終わると、帰りに食材などの買い出しをします。キッチンカーでも消費量の多い店は、問屋さんが届けてくれますけど、自分の場合は2日に1回ペースで買い物に行っています。1軒で済まないので、安いお店をいかに効率よく繋ぐかというルートづくりが勝負ですね(笑)」。
ルートに則って仕入れるのはピラフに使うジャポニカ米やチキン、オニオンなどの素材。だがソースに使うトマト缶だけはエジプト産にこだわって取り寄せている。
「エジプトって砂漠のイメージがありますが、実は農業大国なんです。ナイル川沿岸には肥沃な農地が広がっていて、かつてトマトは世界で第2位の消費国でした。おいしいイチゴも獲れますし、お米もたくさん作ってるんですよ」。
それゆえ「コシャリ」のような国民食ができて定着していったのかもしれない。
毎日帰宅するのは夕方4時半ごろ。鍋釜をクルマから下ろし、翌日の準備とお金の計算、売上報告を行う。ここまでは日々のルーティーンだが、「その時間のあいだに、次はどうしていこうっていうビジョンとか戦略を立てたりするんです」。
その時間が結構楽しい。
「今は、会社でいう上司みたいな人はいません。たまに、僕と同じように独立してビジネスをしている人に連絡とることはありますけど。というのも、自分で考えた次なるビジョンをアシストしてくれそうな人はいないかどうか、おもに“誰か紹介してくれません?”っていう相談ですけどね」。
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