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2018.12.04

時計

【後編】男と時計のツナガル物語 ~オーシャンズ世代が共感するトケイイ話〜

時計は、さまざまな事柄と“ツナガル”ための装置だとオーシャンズは考える。そんな目線で時計を眺めると、日常に広がりと豊かさが生まれてくるだろう。
12の“ツナガル”物語。前編に続き、後半も堪能あれ。
 

心地良い緊張感が背すじを伸ばす
「ジャガー・ルクルト」のレベルソと「ブレゲ」のタイプXX アエロナバル

レベルソはラテン語で「回転する」を意味し、アエロナバルは「海軍航空隊」を指す。前者はエレガンスを、後者はタフネスを、大人の男には欠かせない魅力的な要素を持ち合わせている。
ホテルマネジメント 経営企画室
掛井智也さん Age 38 が語る ツナガリ
身に着けたモノに引っ張られるように、自然と背すじが伸びる。特に腕時計の持っている引力は、ほかのアイテムとは一線を画すものがある。「仕事柄スーツを着る機会が多く、ジャガー・ルクルトのレベルソは気持ちの入った商談やプレゼンなど、“勝負のとき”は必ず着けています」。
普遍性、格式、出自、品質、そのすべてに納得。精いっぱい背伸びをして、28歳で購入した当時の記憶が蘇る。身に着けるたびに緊張した。だが、この歳になって少しずつ馴染んできた。「ブレゲのタイプXX アエロナバルは、僕の先輩の影響です。若くして会社を立ち上げ、夢を形にしていくパワフルな姿に思わず憧れて」。
パイロットウォッチとして、大空への憧れをその身に宿す名作時計。それは自らの夢に向かって挑戦する掛井さんを鼓舞する頼もしい存在だ。かつて背伸びをして手に入れた時計と、これからは歩幅を合わせて歩んでいく。スッと背すじを伸ばして、心地良い緊張感を楽しみながら。

掛井智也さん
PROFILE●1980年東京都生まれ。ホテル・ウェディング・レストランを手掛ける会社に勤務。スーツスタイルの平日とは打って変わり、休日はもっぱらサーフィンへ。本誌を創刊当時から愛読する海男。
 

忘れがたき父の背中を追憶しながら
「IWC」の ポートフィノ

シンプルな文字盤やリーフ針を携えた、クラシカルな面持ちが見る人を魅了する。今年、ブランドが創立150周年を迎えた際に展開されたジュビリーコレクションも記憶に新しい。
ビームス プラス 原宿 スタッフ
岩折純平さん Age 39 が語る ツナガリ
時を刻み続ける恒久性から、機械式時計は親から子へ受け継がれる。岩折さんが愛用するIWCの「ポートフィノ」は、父の形見。アパレル関係の仕事に就いていた父親は、岩折さんがファッション業界へと進むにあたる道標だった。
「いわゆるアイビー世代で、家にはアメリカ製のものを中心にたくさんの服がありました。希少なミリタリーアウターを着ていたこともあったり。そんな父を見て、素直に格好いいなと思っていました」。洒脱な父親が遺した特別な時計。だが意外にも、「これを着けることで、特に身が引き締まるとか、感傷に浸るということはない」と語る。
「ただ、尊敬しているのは確かです。何十年経っても、父が遺していったモノには惹かれるものが多いから。クラシカルで美しいこの時計も同様で、だからこそ大事に使っていますし、身に着けると自然と普段の行動が丁寧になりますね」。忘れがたき想いをのせて、きっとまたこの時計は次の世代へと受け継がれていくのだろう。

岩折純平さん
PROFILE●1979年東京都生まれ。渋谷に程近い高校へ通い、当時からビームスへ足を運ぶ。卒業後は古着店で働きつつ人脈を広げた。現在はビームス プラスのスタッフとして原宿で勤務する。
 

初心を呼び覚ます永遠の相棒
「ロレックス」のエアキング

1940年代後半に誕生したロレックスの代表作で、シンプルな佇まいに航空の世界における伝統を宿す。ローマンインデックスを採用した酒井さんの愛機にはダイヤがちりばめられている。
弁護士
酒井英司さん Age 38 が語る ツナガリ
弁護士の酒井さんにとって、依頼主に与える印象は仕事の結果を左右する。実直、誠実、そして多少の若々しさ。シンプルな佇まいに空への憧憬を孕むロレックスのエアキングを、社会人として初めての時計に選んだのは必然だった。
「派手さはないですが、オーセンティックな高級感がある。それでいて重厚感もあって。プロダクトとしての完成度が高く気に入っています」。酒井さん曰く「実は相当ハードな職種」だという弁護士は、徹夜で書類作成に追われたり、休日出勤もしばしば。今でもふとこの時計を覗き込むと、かつての同僚の顔が浮かぶのだという。
「戦友を思い出すのと同時に、駆け出しだった頃の記憶が甦り、身が引き締まります。僕が弁護士として過ごした時間を共有する時計。もちろん、これからも良き相棒でいてほしいです」。淀みのない笑顔で語られた、相棒に対する信頼と愛着。真っすぐな視線を腕元に落としたあと、その背中はビル群へと吸い込まれた。

酒井英司さん
PROFILE●1980年神奈川県生まれ。中央大学を卒業後、2007年に司法試験に合格。以後、企業法務を専門とする弁護士に。日々激務に追われながらも、2児の父として家事育児にも積極的だ。


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