──『プラントハンター』は植物に関心がない人でも面白く読めますかね?平山「面白いと思います。接するのが『花』ではなく『人』でも、会社では『部下』かもしれないし、モノを売っていれば『洋服』とかになる。どう接するかは一緒だと思いますよ、何でも」。
──接し方について学ぶところが多い本?平山「はい、すごく。本の後半にはこんな描写もあります。危ない山の斜面に登ってやっと花を見つけて、採取する。そのときは『俺はすごい!』ってなりがちだけど、東京に戻ってそのへんにポンと花を置いてみたら、何も感じないことがたまにあると。つまり、自分がやったことに陶酔するというナルシズムが花を見る目を曇らせてしまうことがあるというんですね。『ハンターズハイ』に陥る状態らしいです」。
──どんな仕事をしている人でも陥りがちなことかもしれませんね。平山「僕の仕事でいうと俳優は役作りで身体を大きくする、または痩せる。それで何かやってるつもりになる。そういう空気感で現場に入ると何か成功した気になるけど、そんなのは準備でしかないんですよね。過剰に『困難な仕事をやりとげた!』とロマンチックに仕立てあげてしまうことは非常に危険だと。この本がそこまで書いているのが面白いと思いました」。
──西畠さんはかなり達観されてますね。平山「まだ若いんですよ、1980年生まれだから僕の10歳下。年齢はもちろん関係ないけど、確たる意思を持って仕事をしている人は面白いなって。西畠さんは、植物を単なる植物としてではなく『命』として向き合っている。それがすごく伝わってきて、僕の植物に対する見方もちょっと変わりましたね」。
──どのように?平山「そこらへんに生えてる木だって生きているわけですからね。花に限らず、生きていることをより強く意識するようになったかもしれない。部屋に観葉植物を置こうと思ってお店に見に行っても、買うかどうか結構考えちゃう。これを枯らさずにちゃんと育てられるかなって」。
つい無意識に生命を軽んじていないか、今一度見つめ直してみようと思わされる話。次回は同じくノンフィクションの『移民の詩』をご紹介!
清水健吾=写真 TAKAI=ヘアメイク ぎぎまき=取材・文