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──ユースケさんは今の日本をどう思いますか?
平山「戦後教育の影響で『欧米カッコいい』っていう憧れがあるし、実際に僕もそういうところはある。でも、海外に行って僕が気づいたことって、日本は本当に素晴らしい国だなっていうことなんですよ。治安もいいし、人柄もいいと思う。ただ、この『永遠の0』を読んで思ったのは、以前と比べて日本人が道徳を失ったという話は、あながち否定できないかもしれない、ということですね」。
──どういうことでしょう?
平山「例えば、パリに初めて行ったとき。パリの街中で建物のドアを開けた人は、絶対と言えるほど自分の後ろを確認して、ちょっと離れていても次の人がいればドアを開けたまま待つんですよ。これってすごいなって思う。向こうに行く前は、フランスには自分たちのことを優先して考える個人主義者が多いって聞いてたけど、全然そんなことはなかった。日本に帰ってきてから、僕もやるようにしているんですよ。ドアを開ける習慣を、今も。でも、日本だと怪訝な顔をされるし、これは悲しいことだと思います」。
──それは悲しいですね……。
平山「『自分さえ良ければいいという人間が溢れている』 という老人の言葉に身につまされる思いになりました。特攻で散っていった若者たちに「こんな未来のために命を賭けたんじゃない」って言われないようにしなきゃなぁと。僕なりに確固たる意志を持って生きようと思わせてくれた本ですね 」。
──確固たる意思とは?
平山「恥ずかしくない生き方、かな。僕は普段から、あまり常識にとらわれないようにって思っていて。自分なりに信じるものというか、こうあるべきだって思うことは明確に持っていたいです。空気を読むことがいいときもあるけど、あえて読まないこともよくある。忖度しないってことかな」。
──忖度しない、ですか。
平山「良いものを生み出すためのものなら構わないけど、このまま無難に物事を収拾させたいからとか、波風を立てるのが怖いから押し黙るってことはしたくない。無用な妥協はしたくないですよね。それが僕の生き方というか、自分なりの正義ですかね」。
 
大人として真剣に社会のあり方を考える、ユースケさんのアツい一面が発見できた。次回はユースケさんが人生で強く影響を受けた最後の一冊『日記―「ヘブン・アンド・アース」中国滞在録』(キネマ旬報社)をご紹介する。
清水健吾=写真 TAKAI=ヘアメイク ぎぎまき=取材・文


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