「1972年」に、数字の品番は始まった
品番の基本を理解したところで、今回の本題に入ろう。品番は、そもそも、一体どのような理由があって、いつから使い始めたのか。
「1976年に誕生した『320』まで遡ることができます。『320』はNロゴを最初に搭載したモデルともいわれており、あらゆる意味でエポックメーキングなスニーカーでした。ちなみにNロゴが生まれる前は、サドルに2本ラインを入れていました。それが“うちに似ているんじゃないか”とドイツの老舗スポーツブランドから教育的指導が入り(笑)、一本足してNにしたそうです」(小澤さん)。
さらに遡ると「トラックスター」というモデルが存在する。 ニューバランス不変の設計理念といわれるインステップ・レーシングを引っさげて1960年代に登場、スポーツブランドとしての名声を確立したモデルだ。
「1906年にボストンで誕生したニューバランスは、もともと矯正靴やアーチサポートインソールからその歴史をスタートさせています。アーチサポートインソールをシューズに入れると“新しいバランス感覚が生まれる”ということから、ニューバランスという社名がつけられました。その後スポーツの分野に参入し、1960年代に生まれたのが『トラックスター』だったのです」(小澤さん)。
では「トラックスター」と「320」の間には何があったのか。そこには、ブランドの現会長であるジム・ デービスによる大きな決断があった。
彼は1972年にニューバランス社を買収すると同時にデザインとカラーを見直した。そして、「我々がスターにしたいのは商品ではない」という考えのもと、パフォーマンスブランドとしての認知を広げるべく“数字”を商品名にしたのだ。
そう、1972年こそがニューバランスのナンバリングシステムの始まりである。
こうして生まれた数字のモデル名。であれば、それが「謎に包まれている」のはある意味で正しいこと。靴そのものがスターになるのではなく、デザインに、スペックに惹かれたブランドのファンが増えているのだから。そんな意味を知ると、ことさらに“数字のモデル名”に惹かれてしまうから不思議である。
【問い合わせ】 ニューバランス ジャパンお客様相談室 0120-85-0997 http://shop.newbalance.jp竹川 圭=文 ニューバランス ジャパン=画像提供