デニムが労働着からファッションに昇格したのは、第2次世界大戦後のこと。それ以来、世界中のスター、若者たちが、デニムを魅力的にはきこなしてきた。その伝説のデニムスタイルには、今見ても格好良くなるヒントがいっぱいだ!
甘酸っぱい青春時代を思い出す
大人のためのハードアメカジ
1980年代中盤〜’90年代初頭にかけて大流行した、ストリートファッション「渋カジ」。DCブランドに飽きた都内の有名私立高校の生徒たちが、仲間内でお揃いのチームジャンパーを着て、徒党(チーム)を組んだのが始まりだ。
拠点が渋谷センター街だったため、いつしか彼らの装いは渋谷カジュアル=渋カジと呼ばれるようになる。’67〜’75年生まれなら、きっと今も思い入れのある人も多いだろう。
当初は都内の特権的なコミュニティの産物だった渋カジは、’89年頃から若者情報誌やファッション誌で頻繁に紹介されるようになり、全国的な流行に発展。そして、当初はひとつのスタイルだった渋カジは’90年頃に、キレイ目のアメリカ東海岸トラッドを嗜好するキレカジと、アメリカンバイカー的なスタイルを嗜好するハードアメカジに枝分かれする。今回フィーチャーするのは後者だ。
代表的なアイテムは、バンソンの革ジャン(TJやRJPといったモデル)、リーバイスやリーのベルボトムデニム、ゴローズのシルバージュエリー、レッド・ウィングのエンジニアブーツなど。髪型はセンター分けの長髪で、デッドストックのベルボトムは、裾を引きずってはくのがお約束だった。当時の彼らのスタイルはオリジナリティがあって、不良として本当にサマになっていた。
そんな過去の同世代のスタイルが今とっても新鮮だ。さすがにベルボトムの裾を引きずるのはNGだし、バンソンも本格的なバイク乗りじゃないかぎり二の足を踏む人は多いだろう。でも、黒のレザージャケット×ワンウォッシュのデニム×黒のブーツという法則を守りつつブラッシュアップすれば、僕らはあの頃にタイムスリップできるのだ。
シックさをプラスした2018年度版ハードアメカジ
バンソンのレザーブルゾンは今見てもカッコいいけれど、着こなすのが少々難しい。ならば代役は、上質なレザーを使ったサイのライダーズジャケット。
ノーカラーのミニマルな襟元は、黒のタートルニットとバンダナで大人っぽく演出を。デニムは生デニムに近い質感のデンハムのストレート、足元は上質で作りのいいカルマンソロジーのブーツでまとめれば、シックにまとめた「2018年版ハードアメカジ」が完成。当時が香るHTCのスタッズベルトもブラックで統一した。
バンソンは今でもワイルドだ!
あの頃、誰もが憧れたバンソンの革ジャン。渋カジ流行時のカリスマショップだったバックドロップでは、今でも別注のバンソンが新品で買える。昨年のシュプリームとのコラボレーションで久しぶりに注目されたバンソン、買うなら今が絶好のタイミングかも!?
渋カジを知るための必読書渋カジの歴史を詳しく知りたいなら、『渋カジが、わたしを作った。』(講談社)を読むべし。渋カジの誕生から終焉までの変遷の歴史、ブームに関わった重要人物のインタビュー、当時のショップなどの情報が満載だ。
鈴木泰之=写真 柴山陽平=スタイリング 境 陽子=イラスト