デニムが労働着からファッションに昇格したのは、第2次世界大戦後のこと。それ以来、世界中のスター、若者たちが、デニムを魅力的にはきこなしてきた。その伝説のデニムスタイルには、今見ても格好良くなるヒントがいっぱいだ!
フランスの上流階級のお坊ちゃまファッション=BCBGの象徴として日本で崇められた
ポール・ウェラーのファッション(彼はイギリス人なんだけどね)に続き、今回は“着崩す”スタイルを確率した伊達男セルジュ・ゲンスブールと、男性でも参考にしたいジェーン・バーキンのスタイルを解剖しよう。
伝説のフレンチカップルに学ぶ色気のあるデニムスタイル
1960〜’70年代のフランスの音楽界を牽引したセルジュ・ゲンスブールは、昔も今もフランスの伊達男の象徴であり続けている。’58年に30歳でデビューした遅咲きの彼は、当初は端正なスーツに身を包んでいた。
彼がジャケットをデニムで“着崩す”スタイルを確立したのは、’68年のフランス映画『スローガン』の撮影でジェーン・バーキンと出会ってから。彼女の自由奔放な感性に感化されたゲンスブールはやがて、レノマのストライプジャケットにカーキのミリタリーシャツかラングラーのデニムシャツ、裾を切りっぱなしにしたジーンズにレペットの「ジジ」を素足で履く唯一無二のスタイルを確立する。
今見るとそれほどラフに見えないが、当時のフランス社会では大人としてあるまじき装いで、眉をひそめる人も多かったという。そんな反骨の紳士から学ぶべきことは、色気のあるデニムのはき方。そう、デニムは爽やかなだけじゃなくセクシーでもあるのだ。
一方、17歳でデビューしたジェーン・バーキンは、ゲンスブールと恋に落ちた頃には、この時代の若者特有のヒッピー的なセンスを持ち合わせていた。
フランスで’68年に起こった反体制運動をド真ん中で経験した「MAY68(五月革命)世代」特有の時代精神、と言えばいいだろうか。バーキンのアイコンといえば、エルメスのバーキンとはき古したデニム、そしてカシミヤのセーター。70歳を過ぎた今もこのスタイルは不変だ。
今回フィーチャーするのは、20代だった’70年代の彼女のデニムスタイル。ラフなのに都会的なセンスは、男性でも参考にしたくなるほど洗練されている。というわけで、伝説的なカップルのスタイリングからヒントを拝借すると、こんな感じ。
リメイクのデニムでモダンにアレンジした’70sゲンスブールネイビーのペンシルストライプのジャケットは、スーツを上単体で使うほうが大人らしい色気と“着崩している感”が出て、当時のゲンスブールの雰囲気を醸せるから。シャツとデニムは単なる古着だとコスプレ感が出すぎてしまうので、モダンにリメイクされたオールド パークのものを大推薦。デニムの前身頃を長くとった大胆な裾のカッティングは、脚を長く見せる効果がある。彼も履いていたレペットの「ジジ」は、もちろん素足で。
上品さと“ヌケ感”が同居するバーキンのデニムスタイル男版彼女らしいフレアのデニムは、今またモードの最先端では見かけるようになってきた。でもオッサンにはまだ時期尚早。なので、リメイクデニムというポイントだけ押さえ、細身ストレートを選択するのが賢明だ。
バーキンならそこにTシャツだったわけだが、大人ならそのヌケ感を存分に味わうべく無地のカシミヤニットをタックインして上品さをプラス。足元はフレンチ女子の永遠の定番であるベンシモンの「テニス ラケット」を紐なしで。汗をかかない湿度の低い日は、ノーブラのバーキンにならってカシミヤを素肌に着るのもアリだ。寒いときにはガウン感覚のニットをざっくり羽織って優しい印象に。
鈴木泰之=写真 柴山陽平=スタイリング 境 陽子=イラスト 増田海治郎=文