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2018.10.03

あそぶ

自宅で燻製はこう楽しむ! 大人のグルメマンガ「いぶり暮らし」

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
日中の気温もすっかり下がり、街中が秋めいてきたこの頃。夏バテ気味だった人も、「食欲の秋」にお腹を空かせてはいないだろうか。
そんな時期を前に、ぜひ読んでおきたい作品がある。それが『いぶり暮らし』(大島千春/徳間書店)だ。数多く存在するグルメマンガのなかでも、非常にニッチなテーマを取り扱っている本作。そのテーマというのが、「燻製」である。
『いぶり暮らし』(大島千春/徳間書店)
主人公は同棲中のカップルである、巡(めぐる)と頼子(よりこ)のふたり。慎ましい日々を過ごす彼らの楽しみは、毎週日曜日に堪能する「燻製料理」。自宅のキッチンを使い、タマゴやチーズなどのド定番から、ひき肉や枝豆などの変わり種まで、とにかくあらゆる食材を燻していく。
特筆すべきは、その過程が非常に丁寧に描かれていることだ。自宅で燻製をする場合に必要なアイテムはもちろん、それぞれの食材を燻す時間や注意点などが、ふたりのやり取りから自然に学べるようになっている。
さらには、“燻製タマゴを使ったポテトサラダ”や、“燻製ひき肉を使ったコロッケ”など、燻した食材を進化させる調理法も細かく描かれており、マンガらしい情緒的な表現に思わず喉が鳴ってしまう。最近のグルメマンガには、作中の料理が再現しやすいものとそうでないものとが存在するが、本作は確実に前者。普段、あまり自作できない燻製料理のハードルを下げてくれる。中には野外で燻製にチャレンジするエピソードも描かれているため、これからの季節、キャンプなどのアウトドアを計画している人にとっても有益な情報が満載だ。
加えて、巡と頼子のふたりが織りなす、“食”を通じた心温まる交流も読みどころ。「相手のおいしい顔を見る喜び」「週に1回の休日をともに過ごす」など、いずれもささやかなことではあるが、自分たちの生活に置き換えたとき、彼らから「夫婦円満」のコツを学ぶこともできる。巡と頼子のように、ともに夢中になれる趣味を見つける。それだけで、なんだか夫婦の絆が深まりそうではなかろうか……!
「食欲の秋」を迎えるにあたって、読んでおきたい本作。「燻製」の奥深い世界を堪能しつつ夫婦円満のカギも見出だせそうな、非常に“美味しい一作”だ。
五十嵐 大=文
1983年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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