4年間の高知生活を経て、変わったこと
2015年、伊藤さんは家族のいる東京に戻ってきた。およそ4年間の高知県での生活は、自身にどんな変化をもたらしたのだろうか。
「もともと人付き合いが苦手で、田舎の密なコミュニティってどうなんだろうって思ってたんですけど、実際はそのときのコミュニケーションは、すごく自然だった。高知県での日々では、ごく普通に、何か野菜ができればあの人に届けてあげたいなと思えるし、誰かいれば当たり前に話しかける。そういう人間関係を築けたことはうれしかったですね」。
移住先では、ごく自然にコミュニティの一員としてふるまえる。澄み切った空気や水の美味しさ、目の前に広がる雄大な景色に心が開放的になっていたおかげかもしれないと伊藤さんは説明する。
そんな心地良い三原村にいずれは戻りたい。しかし、今はまだ戻れない理由もある。
「東京に帰ってきたのは、家族がいたから。だから自分にとって1番大切な家族関係をきちんと修復しなくちゃいけないなと思っています」。
伊藤さんにとっての「地方移住」は働き方や生き方だけではなく、家族のあり方も見つめ直す時間となった。
藤野ゆり=取材・文